なぜ日本にUS-2飛行艇があるのか(そしてP-1哨戒機の話)

US-2
テレビタレントと盲人ヨットマンが冒険航海の途上で遭難し、海上自衛隊のUS-2飛行艇で救助されたことが、お茶の間の話題になりました。
自衛隊の民生協力ということで、安っぽい軍国美談になるのは毎度のことですが、タレント絡み事案ということもあってか、海上自衛隊広報のはしゃぎっぷりに辟易しました。

それはともかく、今回の救助活動は本州から約1,200kmの洋上で行われ、荒天にもかかわらず結果的に2名の遭難者は無事助かりました。

US-2のように、外洋で着水して救難活動ができる飛行艇は、世界でも他に例がありません。日本だけで開発され、海上自衛隊だけが装備しています。
でも、それは、そもそも民間船舶の遭難に備えることが主目的ではありません
自衛隊は、外国からの武力侵略に備える組織であって、遭難者の救助を目的とした組織なんかではないのです。

では、なんのために海上自衛隊はこんな救難飛行艇を装備しているのか。それは、洋上を長距離進出して哨戒活動を行う「哨戒機の遭難」に備えるためです。
具体的に言うと、シーレーンなどを哨戒するP-3CやP-1哨戒機が遭難した際、その乗員を救助するのがUS-2の任務です。ですから、US-2は哨戒機の搭乗員全員を収容できる規模と、哨戒機の活動範囲をカバーする航続力があります。それ以上でも、それ以下でもありません。

最近のニュースで、インドがUS-2の導入に前向きであることが報じられています。これは言うまでもなく、同国がアメリカ製P-8哨戒機を導入し、中国の海軍力への対抗姿勢を強めていることと無関係ではないでしょう。

また、今回の救難任務において、遭難者を救助したUS-2は着水時にエンジンに水を浴びたとかで、4基あるエンジンのうち1発を停めて帰投したそうです。
もし、これが双発機だったら、救助活動が長時間に及んだ場合などは、本土までの帰着は困難になってしまいますね。
さて、我が国で開発したP-1哨戒機もエンジンは4発です。
その理由は、もう言うまでもありません。洋上の長距離進出と長時間滞空を考慮すれば、4発であることが必要なのです。
もしP-1が双発であったならば、エンジントラブル時のリスクを考慮すると、進出距離や滞空時間の制約が大きくなります。つまり、双発機と4発機では、同じ機体規模でも、実用時の進出距離や滞空時間は大きく違ってしまうのです。
これが、P-1が4発機でなければならない、最も大きな理由です。

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2 thoughts on “なぜ日本にUS-2飛行艇があるのか(そしてP-1哨戒機の話)

  1. 素人ですがすみません。
    4発機は燃費が双発機よりも劣ると聞いたことがありますが、その反面、速度は出るとも聞いています。諸元表を見ますと、P1とP8の順で、速度が833km/hと、815km/h。航続距離が8,000kmと2,222km。速度の差は微々たるもので、航続距離が4倍。この差は燃料積載量が4~8倍だと考えれば納得はしますが、燃費効率が良いとするなら喜ばしい限りです。P1の機体の太さだけを見ると、燃費効率は悪そうですが、こんなに太くて燃費が良ければ既に一般の航空機として売っているでしょうから、たぶん違いますね。
    哨戒機の場合、おっしゃる通り4発機はメリットがあると思うのですが、アメリカのP8が双発なのは、機種がB737の改造機だからという理由が一番でしょうか。それとも、アメリカに本気で喧嘩を売ってくる奴なんていない、という心構えが原因でしょうか。

    • コメントありがとうございます。
      P-8が双発なのは、基本的な運用方法がP-3CやP-1とは異なっていることが主因ですね。
      海上自衛隊のP-3CおよびP-1では、365日、絶え間なく常続的に海域をパトロールする運用をしていますので、なにかあっても哨戒を続けられる4発機が要求されました。
      しかし、米海軍では、常続的な監視は人工衛星やMQ-4Cトライトン無人機を主用し、P-8の任務はピンポイント的な運用が主体になるため、双発で可とされたのでしょう。
      ちなみに、昔、海上自衛隊P-2Jの後継機としてボーイングが日本に提案してきた737改造案では、わざわざ4発に改造する案が示されていました。
      運用の違いによって、4発が必要かどうかの判断が異なってきます。

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