H-53シリーズヘリコプターの放射性物質について(改題)

※オスプレイの話ではありません。
紛らわしいので改題しました。

沖縄タイムスの記事によると、キャンプ・ハンセンで墜落した米空軍のHH-60ヘリコプターには、「飛行中の回転翼のひび割れを調べるセンサー」用に(放射性物質の)ストロンチウム90が使われていたのではないかという。
(追記:沖縄タイムスは続報を出しており、米軍によるとHH-60にはストロンチウム90は使われていないそうです。)

「飛行中の回転翼のひび割れを調べるセンサー」というのは、シコルスキー社のIn-Flight Blade Inspection System (IBIS)というものだ。H-53シリーズだけでなく、H-3/S-61シリーズのヘリコプターにも、少なくとも一部で採用されていた。これは普通に知られているもので、秘密でもなんでもないから、Googleで検索すれば親切な説明資料も出てくる。
これを装備するヘリコプターのブレード(回転翼)は中空に作られていて、内部には大気圧よりも少し高い圧力で窒素が充填されている。そして、各々のローターには、蓋(プラグ)をするような形で、IBISのプレッシャ・インジケータが取り付けられる。
下の図がIBISのプレッシャ・インジケータで、左図は放射線抑制効果のあるカバーを付けた状態、右図は運用時にカバーを外した状態である。
IBIS
もし、ブレードに何らかのダメージで亀裂が入ると窒素の圧力が抜け、プレッシャ・インジケータのスイッチが作動する。すると、インジケータに黒い2本のラインが現れる(左図の状態)ので、停止中であれば目視で異常が確認できる。
また、それと同時に内蔵されたストロンチウム90から放射線が出るので、飛行中であっても機体に取り付けられたセンサーが反応して警報を発する。こうして、目視点検できない飛行中でも、乗員がローター・ブレードの亀裂(クラック)を検知できるというわけだ。

このIBISは当然ながら海上自衛隊のMH-53にも装備されていて、ローターが静止していれば、それは外観からも容易に確認することができる。
下のサイトにある写真で、MH-53のローターの付け根に、カバーの付いたIBISプレッシャ・インジケータが付いているのがよく分かる。
http://homepage3.nifty.com/run2das/peacemh53monndai.html(るんるんのピースレポート)
もしIBISを装備したヘリコプターが墜落した場合、現場救助や回収にあたる人員に対しては、もちろん放射線の危険を周知することになっている。
当然、関係機関にも通知されるだろうし、それは然るべく公表されることになるだろう。沖国大事故の際もそうだったと思う。

さて、それではHH-60にIBISは装備されているだろうか?
H-60シリーズは、H-3やH-53と同じシコルスキー製のヘリコプターだ。そして、HH-60にIBISがあれば、陸海空自衛隊で使用しているUH-60やSH-60にも装備されている可能性が高い。
しかし、ちょっとネットあたりで調べても、H-60シリーズにIBISが付いているという話は拾えなかった。H-60シリーズに装備されているのは、ストロンチウムを内蔵しないBIM(Blade Inspection Method)インジケータのようだ。下写真で赤丸や矢印を付けたのがそれだ。
HH-60のハブ
(写真はhttp://www.aircraftresourcecenter.com/awa01/401-500/awa461-UH60-Spenard/00.shtmから拝借した)
そんなわけで、私はHH-60にIBISの装備はないのではないかと思うが、本当のところはどうなのだろう?(ヘリコプター屋に聞いてみればいいのだろうけど。)

ただ、ヘリコプターのローターに放射性物質を使うケースとしては、IBISのようなデバイスではなく、マスバランス(重量バランスをとるための錘)として劣化ウランなどを使っていることも考えられる。
ネットで検索してみると、2006年に「赤旗」紙が、普天間でも飛んでいるCH-46に劣化ウランが使われていることを報じていたそうだ。

実を言うと、私自身も折損したローターブレードの処理に関わったことがあって、その際に自衛隊関係者から「放射性物質」のことを耳打ちされたことがある。(事後だったけど)
今回の報道でそんなことを改めて懐かしく思い出したので、昔調べた話をネタにして、ちょっとエントリを立ててみた。

【8月10日 追記】
上で触れた沖縄タイムスは、このエントリを書いた翌日に続報を出しており、やはりHH-60にはストロンチウム90(ひいてはIBIS)が使われていないようです。
同報道では、前方監視赤外線カメラ(FLIR)のレンズにトリウムが使われていることを指摘していますが、これにはストロンチウム90のような危険性はありません。放射性物質としての規制を受けるようなレベルでさえないと思います。
ちなみに、部品防錆などのために施される「ストロンチウムクロメート」処理というのがありますが、これは放射線が問題ではなく、含有される六価クロムが理由で有害物質とされているものです。いろいろややこしいです。

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2 thoughts on “H-53シリーズヘリコプターの放射性物質について(改題)

  1. 10月11日、沖縄県東村でのCH53不時着炎上事故に関して、放射性物質の扱いにつき、各マスコミ報道に違和感を覚え、ネット検索してブースカさんのブログにたどり着きました。詳細かつ大変わかりやすいご説明ありがとうごさいました。
    まだ他の記事は拝見しておりませんが、ちょくちょくお邪魔させていただきます。
    (バラサ、バラサ!。)
    ありがとうございました。 

    • ご訪問いただきありがとうございました。
      めったに更新しないズボラなブログですので、またお暇つぶしにでも見てやってください。

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