調布のマリブ墜落事故とジェネアビの闇

JA4060
日曜の外出中に調布で起きた墜落事故を知った。
住宅地に墜落して3名が死亡、うち1人は巻き添えにあった住民の方だということで、誠に痛ましい事故となった。
犠牲となった方々の冥福と、負傷された方々の回復をお祈りする次第である。

帰宅してから、テレビなどでいろいろな情報や映像に接したが、本機は多人数が搭乗していたのに加えて、過剰な燃料を搭載し、かなり機体重量が重かったようだ。
たとえ制限重量を超えていなくとも、機体の重量は離陸性能に大きな影響を与える。
エンジンの出力が出ていなかったのではないか、との推測も出ているが、実際のところはまだわからない。

映像を見た感じでは、確かに出力不足を疑わせるが、そればかりではないような気もする。
映像では、本機は機首を大きく上げており、ふらふら飛んでいたという証言もあることから、ひょっとするとバックサイド領域に入っていたのではないかという気もするのだ。
(バックサイドとは、低速で頭を上げすぎ、エンジンのパワーで機体を吊って低速飛行しているような状態)
仮にそうだとすると、残骸から回収されるエンジンの回転計やブースト計は、意外と正常値を示しているかもしれない。
いずれにしても、事故調査委員会の調査結果が待たれるところである。

事故原因と並んで報道で言及されているのが、本来禁止されている「遊覧飛行」疑惑である。
調布飛行場では、付近住民との取り決めで「遊覧飛行」が禁じられているため、「慣熟飛行」などの名目でレジャー飛行が繰り返されていた。空港事務所も、そんなことは百も承知で、書類だけ「慣熟飛行」と書けば、目くじら立てることなく飛行を許可していた。空港事務所も共犯関係である。

実は、こういう「慣熟飛行」などの名目によるレジャー・遊覧飛行は、調布だけで行われているわけではない。
他の空港でも、クラブ会費などの名目で金を出して、クラブや個人所有機によるレジャー飛行に同乗することが、わりと普通に行われている。
もちろん、有償での旅客輸送は「航空機使用事業」の認定や「事業用操縦士」の資格が必要だが、「飛行クラブ」などの名目で、いわば「白タク」的な運用が、あちこちの飛行場で日常的に行われている。

どこまでが規制の対象になるか曖昧な部分もあるが、自家用機の運航には、こういう「法の網」をくぐっているケースが少なからずある。
今回の事故を受けて、調布での運航規制がますます厳しくなるとも言われているし、その影響は少なからず他の空港にも波及するだろう。
飛行機を愛するものとしては残念だが、自業自得と言わざるをえない。
健全なルール遵守なくして、ジェネラル・アビエーションの健全な発展はありえない。
ジェネラル・アビエーションに関わる諸兄は、今一度、エアマンシップの原点を振り返るべきであろう。

追記(2019年7月8日)
すっかり忘れていたけど、本件事故については国交省事故調査委員会が報告書と補足説明資料を公開しており、やはりバックサイド・オペレーションに陥って失速したものと結論されました。
事故調査結果のページ


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