オスプレイの安全性を考える – ハザード検討の一例

オスプレイの安全性議論に関する前のエントリを受けて、ヒューマン・エラーで生じたモロッコでの墜落事故について書くつもりだったが、その前に片舷停止によるハザードに関わる検討を示しておくことにした。簡単なハザード解析に近いものだ。

片発エンジンの停止ケース
オスプレイは、離着陸を除く飛行中の大半が、いわゆる「飛行機モード」で運航される。その際は、ほとんど双発プロペラ機と同様の形態だと言って良い。
しかし、安全性の面で通常の双発プロペラ機と大きく違う点がある。オスプレイは、片方のプロペラが停止した状態では釣り合いが保てない(飛行できない)ということだ。
そこで本機は、片方のエンジンが停止した場合に備え、健全側のエンジンから故障側のプロペラにも駆動力を伝えられるよう、インターコネクト・シャフトを有している。健全エンジン1基だけで、両方のプロペラを回せるのだ。
このことを、在来型双発機との比較で示すと、下表のようになる。

エンジン片発停止ケース

エンジン片発停止ケース

すなわち、オスプレイは、在来プロペラ機と同様、片側エンジンが故障しても飛行継続可能だ。

片舷プロペラの故障ケース
しかし、片舷の推力を失うケースは、エンジン停止だけではない。エンジンが無事でも、プロペラ機構の故障によって、片舷推力を失うことがある。
P-3CやE-2Cなど在来のプロペラ多発機が、1基のプロペラを停止して着陸する事例は時折見受けられるが、これらのうち多くのケースは、エンジンのトラブルではなく、プロペラ・ピッチ機構のトラブルだ。プロペラのピッチ機構が油圧トラブル等で制御不能となり、その結果、当該エンジンを停止しているのである。
もし、こうしたトラブルが起きた場合はどうか。オスプレイと在来機を比較すると下表のようになる。

プロペラ片舷故障ケース

プロペラ片舷故障ケース

つまり、1エンジン停止に対するオスプレイのリスクは在来双発機と同等だが、片舷プロペラ故障については、在来航空機にない独特のハザード・リスクがあるのだ。
また、飛行機モードで双発プロペラ機として飛行するオスプレイは、在来単発プロペラ機と単純比較すると、プロペラ故障を起こして推力を完全喪失する確率が2倍である。
しかも、離着陸を主翼揚力に依存しないオスプレイは、推力を喪失した際の滑空性能が低く、滑空比は5程度(F-104やF-16、あるいはスペース・シャトルと同程度)だとされている。これは高度を1,000m失う間に5,000m進むことができる計算だが、個人的には、オスプレイの実際の滑空比はもっと低いと見ており、滑空比5というのは理論的な理想値に近いだろう。
また、F-104やF-16などの戦闘機と滑空比が同程度だとしても、オスプレイの場合は戦闘機よりも運用高度がずっと低いはずなので、不時着条件はずっと悪くなる。仮に1,000mを飛行時にプロペラ不具合で推力を喪失したら、直近5km以内に安全に不時着できる滑走路代わりの広場がある見込みは極めて低いだろう。数1,000mの高度で運用される戦闘機に比べて、オスプレイは非常に条件がシビアなのである。

リスクにどう向き合うか
このようなリスクを十分低減するために、オスプレイのプロップ・ローター機構が、在来のプロペラ機構よりも遥かに高い信頼性を備えていなければならないし、そのような設計になっているはずで、そのためにはコストも掛かっているだろう。しかし、オスプレイには在来機にないリスクがある、ということは事実として言える

とはいえ、これを「オスプレイが危険な航空機である」と単純解釈するのは短絡である。
言えることは、あくまで「オスプレイには在来機にないリスクがあり、安全性を保つために、適切な対応が要求される」ということだ。
たとえ従来にないリスクがあっても、適切な配慮が実現されていれば、ハザードに至らず運用することは可能なのである。問題は、それが実現されるかどうかである。
安全性評価というものは、危険or安全の択一ではない。結論はしばしば定性的なものに留まり、せいぜいこのような比較論でしか語ることができないものだ。
従って、普天間配備の是非論についても、安全性の検討評価は、一定の参考材料を与えることはあっても、最終的には運用者や周辺住民の許容度の問題に帰着せざるを得ない部分が残るのである。

関連してるかもしれない記事:


2 thoughts on “オスプレイの安全性を考える – ハザード検討の一例

  1. こんにちは。本題との関係は薄いのですが、オスプレイのプロップローターは機構的にフェザリングとオートローテーション時の動作を両方共に兼ね備える構造になっているのでしょうか。

    • プロップローターの機構については詳しい資料を持っていませんが、フェザリング機構については、お尋ねのとおりだと考えます。
      ヘリコプターモード時にエンジンが停止した場合は、ローターが低ピッチになり、(原理的には)オートローテーションを可能にするものと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です