(続)故江畑謙介氏に批判的なblogが炎上

はてなブックマークからのアクセスがあったので、ちょっと嬉しくなって、補足エントリを書きます。(笑)
読んでもらえると嬉しいです。
江畑謙介氏の航空技術知識に対する僕の不信は、彼のいくつかの著作や記事に基づいていますが、その思いを深くしたのは、「日本の軍事システム-自衛隊装備の問題点」という一冊でした。
この本を手に取った動機は、本当に純粋なものでした。自衛隊の兵器システムについての問題指摘は、自分にとって勉強になる点も多いだろうと思ったのです。しかし、防衛航空機技術について書かれている箇所を読んで、呆れ、失望しました。
一例を挙げます。
彼は、F-2支援戦闘機に適用された主翼構造の「複合材一体成型技術」について、「左右一体で成型されている」という意味に誤解したうえで、既にアメリカのAV-8B戦闘機などで実現済みの技術だと述べています。しかし、AV-8Bなどの主翼は一体成型ではなく「複合材部品を組み立てたもの」に過ぎず、技術レベルとしては一世代以上も前のものです。
こんなのは、当時「航空技術の専門家」や「飛行機オタク」には常識でしたが、「軍事オタク」の江畑氏はご存じなかったようです。
しかし、F-2に関して行われた報道公開や報道説明には、もれなく参加していた江畑氏ですから、複合材一体成型主翼についての説明は、耳タコになるほど聞いていたはず。いったい、どういう「常識」を持って取材に臨んだら、こういう誤解が可能なのだろうか、と不思議でした。
以上は一例ですが、江畑氏はこういう類の誤解(曲解?)をいくつか並べた上で、「防衛庁や国内メーカーによる戦闘機国産論は、誇大な宣伝文句を並べたものだった」として、それらの説明が嘘だったと言わんばかりの書き方をしていました。これは、残念ながら総論としても事実に全く反するものでした
私は、江畑氏は「専門家ではない」と思っていますから、技術的な知識が無いことを責めようとは思いません。また、知識があるように装うことも、飯を食うためには必要でしょうから、それも責めようとは思いません。
しかし、彼の「航空技術に関する見識」が、かなり不正確な「知識」に基づくものであったことは、事実として指摘できます。
ただし、私が問題にしたいのは、実は江畑氏本人の知識や見識の不足などではありません。
問題だと思うのは、「オタク的知識」と「専門知識」とを混同してしまう日本の社会なのです。

イラクからの中継を見て、そこに写っているF-15Eが艦上機ではないことや、F-117が超音速では飛べないことを指摘することくらいは、オタク的知識で十分です。江畑氏は、このような場面で「擬似専門家」としての役割を、よく果たされたと、私も高く評価します。
しかし、日本の防衛政策や技術戦略を真面目に考え、評価するためには、本当の「専門知識」が必要なのです。そして、そのような「専門知識」というのは、自身の経験と無関係に、かつ容易に個人に蓄積され得るような「オタク的知識」とは全く別種の、多数のプロフェッショナルによる「集合知」でしかあり得ないのです。
「軍事オタク」を自認し、江畑氏を崇敬したりアイドル視したりする人たちにも、この点だけは理解してほしいものです。
J-CASTニュース


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