「XC-2が設計重量よりも重い」という間違い

東京新聞のニュースによると

 航空自衛隊の次期輸送機として川崎重工業が開発を進めているC2(仮称)輸送機が、設計重量を数トン超過していることが分かった。

のだそうです。
確かに、開発が進められている次期輸送機XC-2は、強度試験の結果などを受けて構造補強が施されており、当初よりも重くなっていることは誰の目にも明らかなところです。記事としては「何を今更」の感があります。
しかし、この記事でちょっと気になったのは、言葉の使い方が間違っていること。
XC-2試作機は構造補強を受けたので、その工事前よりも重くなったのは間違いないでしょうが、それは「設計重量より重くなった」のではありません
製造業の常識として、後で補強部品を追加する場合などでも、必ず設計変更によって製造部門に指示されます。
(工業製品は日曜大工と違うのです)
従って、設計変更によって追加された補強の重量も、「設計重量」のうちです。
すなわち、正しく言えば「設計重量そのものが重くなった」のです。
細かいかもしれませんが、エンジニアなどにとっては、間違ってはいけない重要なポイントです。
また、もうひとつ、こちらはトンデモない間違いです。

鋼材を厚くして補強するなどしたため、

今の世の中、飛行機の構造は大半がアルミ合金でできています。
過去には鋼管骨組みを持つ飛行機もありましたし、世界最初の金属製飛行機(第一次大戦の頃)は構造材に鋼を使いましたが、XC-2の主要構造に鋼材を使うことなどありません。
「アルミ製の鉄板」なんていう冗談がありますが、新聞記者がそれを地で行く無学ぶりを紙面で晒しているという、なんとも情けない記事です。
でも、私が本当に情けないと思うのは、一般新聞の記者だけでなく、いわゆる「航空評論家」の類までが、同種の間違いを平気でしていることなんですけどね。


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