ATD-X改めX-2の地上走行試験

2月11日、先進技術実証機ATD-X改めX-2の地上走行試験が、名古屋飛行場の誘導路および滑走路を使って行われました。
地上滑走するX-2
この後も、引き続き数回の地上走行試験が行われ、高速滑走、模擬離陸を経て、初飛行が行われることになります。
初飛行では、そのまま航空自衛隊岐阜基地に着陸し、機体は防衛省へ引き渡されることになるようです。
地上滑走するX-2
このX-2については本ブログでも何回か採り上げましたが、将来戦闘機の実現に向けては、まだ様々な課題があります。
とはいえ、本機によって大きな技術的前進がもたらされることは間違いなく、その成果が大きく結実することを祈ってやみません。

以下、本機について触れた主な過去エントリです。
先進技術実証機ATD-Xとは何なのか(その1) IFPC
先進技術実証機ATD-Xとは何なのか(その2) ステルス性
先進技術実証機ATD-Xとは何なのか(その3) 戦闘機エンジンの国内開発


中国の戦闘機用エンジン開発インフラについて

以前のエントリで、日本には戦闘機エンジン開発のインフラが整っていないことを示した。
具体的には推力15トン級の高空試験設備(ATF)がないということだ。
では、諸外国はどうなのか。
防衛省・自衛隊の平成14年度政策評価書「エンジン高空性能試験装置」の参考資料に、下表が示されている。
table
表中「空力推進研究施設」となっているのが東千歳に整備されたATFだが、空気流量70kg/secで、上限が5トン級に留まることは明らかだ。
他方、欧米のATFはケタ違いの能力を持っており、アメリカの施設などはF-35に搭載されるような推力20トン級エンジンにも対応可能だ。さすがである。

では、航空先進国と呼ばれる欧米各国ではなく、近隣諸国ではどうなのか。
特に中国では、既に推力13トン級のWS-10を実用化しており、更に推力15トンを超えるWS-15の開発も進んでいるとされている。
中国には戦闘機用エンジンを開発できるATFはあるのだろうか。

答えを言うと、少なくとも中国は推力13トン級に相当するATFを保有しており、WS-10はこの施設を使って開発されたと思われる。
先の資料には示されていないが、米国空軍が開示した資料に、その存在が示されている。
タイトルは「CHINA’S HIGH ALTITUDE SIMULATION TEST STAND FOR AIRCRAFT ENGINE UNDER CONSTRUCTION =中国が建設中の航空機エンジン用高々度試験装置」とあり、米国の防衛技術情報センター(DTIC)のサイトでPDFを閲覧できる

report
1988年に作成されたこの資料は、その前年に出された中国の刊行物を翻訳したものだ。
これによると、中国南西部に第101高々度設備(No.101 High Altitude Stand)と呼ばれるATFが建設されており、空気流量は120kg/sec、最大速度2.5マッハ、高度は25,000m(82kft)まで試験可能だという。
前掲の表にこの施設を書き足すと、下のようになる。
table2
この施設、建設着手はなんと1970年とされ、文化大革命で工事進捗は滞ったが、1980年には初期段階の試験が行われたと書かれている。
やっと最近になって5トン級ATFを整備した日本と比べれば、中国が非常に早くから航空機エンジンの自国開発を念頭に置いて、努力してきたことがわかる。
現在中国が開発中のWS-15を想定すると、このATFでもやや力不足の感があるが、おそらく既にこれよりも大規模なATFが建設されているのだろう。

巷間、中国の航空機は皆ロシア機や米国機のコピーだとか、中国には独自開発能力がないなどという戯れ言も耳にするが、こうした現実を知っていれば、彼らの技術力を見下すようなことはできないはずだ。
既に、中国の航空機開発能力は、その環境と経験において、日本を凌いでいることは明らかなのである。


スマホHTL21のバッテリー交換メモ

3年前から愛用しているスマホ、HTC Butterfly J HTL21のバッテリーがヘタってしまったので、自力で交換した。
このスマホはauから販売されていたものだけど、2年使ったタイミングでauからMNVOのmineoにMNPで乗り換えたので、auのサポートが受けられない事情があった。
街の修理屋へ持って行けば15,000円くらいでやってもらえるようだが、それも嫌なら自分でやるしかない。

webで調べてみたら、写真入りで親切な手引が書かれているブログがあったので、大いに参考にさせてもらった。
HTC J Butterfly HTL21を分解してバッテリー交換してみた

結論から言うと、無事バッテリーの交換は完了し、費用はバッテリーと工具を合わせて3,000円で済んだ。
せっかくなので、ここにメモを残しておこうと思う。

買ったもの

自分で交換しようと思い立ったら、まずバッテリーを調達しなければ話にならない。
バッテリーの型番はBL83100。
先ほどのリンク先ではeBayで2,500円ほどで買ったとあるが、調べてみると国内Amazonでも売っていた。1,680円だった。

または

あと、スマホの筐体をこじ開けるためのツール。
十徳ナイフでもよいらしいが、手元に持っていないし、どうせ買うなら専用ツールを用意したい。
このiSesamoという工具、iPhone用と謳っているけれど問題ない。
これのおかげで無事分解に成功したが、これがなければ相当手こずったはずで、おすすめのツールである。
Amazonで980円の出費だったが、それだけの価値はあったと思う。

もう一つ購入したのが、絶縁ピンセット。
これはなくても良かったかもしれないが、安いものなので買っておいても良いと思う。
僕は何も考えずに先が平たいタイプを買ったが、先が丸いタイプなどもある。
(Amazonあわせ買い対象商品なので注意。2,500円以上の買い物をすると送料無料になる。)

あとは、精密ドライバーが絶対必要。僕は家にあったものを使ったが、購入するにしても特に高価なものでなくて良いと思う。
HTL21の基盤取り付けには、大小のプラスネジが使われていて、特殊ネジは使われていなかった。

戦訓

まず筐体を開けるのに手こずる。
専用工具を使っても簡単ではなく、根気よくこじ開けていかないと筐体は開いてくれない。これが第一関門。
防水のためのシール、パッキンは、この時点でダメになってしまうから、自前でバッテリー交換を試みるなら、防水は諦めること。

外したネジをきちんと管理すること。
ネジを外すことは簡単だが、場所ごとに異なるネジが使われているので、どれがどこのネジかをちゃんと管理すること。
非常に小さいネジもあるが、失くしてしまったら大変だ。
僕は、粘着テープの裏を仰向けにして、その上に外したネジを並べて管理した。ネジが転がったりしないのでうまく行った。

フレキケーブルの取り扱いが難しい。
外したフレキケーブルを戻す際、きちんと挿さっているかどうかがわかりづらい。
小さなフレキケーブルなので、挿さったという手応えがないのだ。
無理に力を入れて破損したら元も子もないので、適度なところで留めておこう。

ケーブルの挿し忘れに注意。
最初、フレキケーブルの1本を挿し忘れて組み上げてしまったため、電源が入らなかった。
かなり動揺したけれど、落ち着いてバラシ直してみて、挿し忘れに気がついた。
意外と見落としてしまうものだ。

感想

さすがにスマホは精密で、作業の細かさはデスクトップPCの自作などとは比べ物にならない。
今回は、ルーペ代わりに100均で買った老眼鏡のお世話になった。
細かい作業に自信のない人は、メーカーサポートや街の修理屋にお任せするのが得策なのかもしれない。
しかし、自分でやり遂げて起動に成功した時は、けっこうな達成感を味わった。

取り外したバッテリー

取り外したバッテリー


先進技術実証機ATD-Xとは何なのか(その3) 戦闘機エンジンの国内開発

先進技術実証機ATD-Xに2基積まれているXF5エンジンは、日本の独自開発によるもので、推力は約5トン。
しかし、現代の戦闘機用エンジンの推力は15トン級に達しており、XF5そのものは実用戦闘機に使えるほどの出力はない。
もし、日本が独自に国産戦闘機を開発しようとするなら、以前のエントリに書いた技術要素だけでなく、搭載エンジンも課題になるはず。
しかし、これまでのように米国などの外国製エンジンを使うという選択肢を採るのは難しいだろう。
F-35やF-22に採用されているようなエンジンは、アメリカも簡単に輸出しないだろうし、推力偏向を含めたIFPC機となれば、エンジンと機体の高度なインテグレーションが必要だ。エンジン制御ソフトウェアは、機体の姿勢制御ソフトウェアと不可分になるわけだから、単純にエンジンだけを輸入すれば済む話でもない。
となると、将来戦闘機の開発のためには、エンジンの国内開発も準備しなければならない

では、日本で15トン級エンジンの開発は可能だろうか。
エンジン開発の技術的難易度は、必ずしも推力の大小だけに左右されない。
日本のジェット・エンジン産業は、実証機用のXF5だけでなく、P-1哨戒機用の実用エンジンF7の開発も成功させている。また、戦闘機エンジン用の要素技術についても、防衛省による研究試作を経てきており、設計・試作だけなら、15トン級エンジンを目指すだけの基礎的技術力はあるかもしれない。
問題は、そのエンジンをどうやって試験するかだ。

エンジンの開発には、試作エンジンを実際の運転環境で試験することが必要だ。
しかし、航空機のエンジンは高空で仕事をする。地上で運転しても、高空の運転状態を試験することはできない。
では、どうするか。
大きく分けて次の2通りの方法がある。

  • 試験用のエンジンをFTB(Flying Test Bed)と呼ばれるテスト用の航空機に取り付け、高空で運転して試験する
  • 高空の大気諸元を模擬できるATF(Altitude Test Facility)と呼ばれる地上施設で運転して試験する
  • 東千歳のATF

    東千歳のATF


    これまでの国産エンジン開発では、エンジン推力の規模等に応じて、C-46輸送機やC-1輸送機を改造したFTB機による空中試験のほか、外国のATFを借用したり、北海道東千歳に建設されたATF等を使用したりして試験が行われた。
    しかし、戦闘機用の大推力エンジンとなると、FTB機による空中試験はほぼ不可能であるうえ、東千歳のATFは推力5トン級が能力の限度である。
    つまり、日本国内には戦闘機用エンジン開発のインフラが整っていないのである。

    では、外国のATFを借用して国産エンジンを開発できるだろうか。

    日本で初めて独自の戦闘機用エンジンを開発するとなれば、ATF試験だけでも相当な期間が必要になるはずだ。仮に(もちろん有償でだが)借用できたとしても、日本側が望むように施設を専有することは難しいだろう。
    また、開発においては、途中での不具合に対応して、試験スケジュールの変更や追加にも柔軟に対応できなければならないが、外国施設の借用では、そのような対応も期待できない。

    実は、現在のF-2戦闘機を開発していた頃、次期戦闘機のエンジン開発を睨んで、国内でも15トン級ATFの建設を望む声が挙がっていた。
    しかし、なかなか予算化されることがなく、結局5トン級に妥協して事業化されたのが、現在の東千歳にあるATFだ。
    このATF建設事業の顛末から、航空機開発に携わっている我々関係者は、「これで日本での戦闘機用エンジン開発はなくなった」と理解したのである。

    さて、それから20年あまりが経過した現在、当時から各種の提案を行っていたATD-Xが完成し、将来戦闘機への足がかりとなる技術蓄積を得ようとしている。
    しかし、以上のように、エンジンの自国開発が困難な現状では、独自開発戦闘機の実現も難しい
    つまり、ATD-Xができたからといって、単純に戦闘機開発への道が開けるといった話ではないのだ。


    aerolabのYS-11は再びJAナンバーで飛ぶのか?

    国交省で使っていたYS-11の払い下げが行われ、株式会社aerolab internationalという会社が購入し、寄付を募って整備し、再飛行させた。

    この機体、当然日本国航空局の登録番号を有していたが、既に本機の耐空証明は失効していた。
    再び国内で耐空証明を復活させるためには、通信電子機材の更新などが必要だったと思われるが、同社は本機の所有者名義をアメリカ籍に移して、アメリカFAAの登録記号を取得して飛行した。
    (アメリカの登録記号を得るということは、名義上の所有者は米国籍でなければならないはずだ。そのため、少なくとも登録の上では、現在本機は米人所有になっている。)

    FAAの登録情報を確認してみると、2015年2月19日付で登録されており、耐空証明の区分(classification)は”unknown”となっている。
    更に調べると、YS-11が、Experimental区分にあるSpecialの類別で、”Vintage and Experimental Airplane Groups”に分類されていることがわかった。
    つまり、日本では認められていない、アメリカ独自のExperimental区分で耐空証明を得るため、アメリカ籍にしてNナンバーの登録記号を得たわけだ。
    すなわち、現在本機は米国で飛んでいる大戦機などと同様、Experimentalカテゴリの扱いなのである。
    以前、零戦の話で書いたとおり、このカテゴリのままでは日本の耐空証明は得られず、国内で飛行許可を得ることは難しい。

    aerolab社がFacebookで説明したところによれば、本機をいったん米国に空輸し、通信電子機材を積み替えるなどして「正式な耐空証明」を得ようと考えているらしい。
    この「正式な」耐空証明というのは、Experimental区分ではなく、Standard区分の類別(日本で言うN類やU類)での耐空証明のことだろう。
    そのうえで再度日本に戻し、日本国航空局の飛行許可を得ようということだ。
    もし、YS-11が通常区分の耐空証明を得られれば、日本への輸出耐空証明も発行可能であるため、再びJAナンバーを取得できる可能性は高い。
    しかし、アメリカまでの空輸には十分な整備も必要だし、Standard区分の耐空証明取得が得られる見通しがあるのかどうか、よくわからない。
    それに、既に国内でもYS-11のスペアパーツは入手困難になっているはずだ。この先の維持を考えると厳しいものがある。

    aerolab社の心づもりがどうなのか、外野にはわからないけれど、やはり日本の飛行機である。再び日本の空を飛ぶことになれば、そのときはぜひJAナンバーで飛んでほしいと思うのである。