小松基地のF-15墜落事故について 前回エントリの補遺

前回のエントリで「火災が起きたのではないか」という仮説を立てたところ、火災警報が出るから、緊急宣言なり脱出なりできるだろう、という主旨のご指摘がありました。
まったくそのとおりです。
しかし、火災警報システムや火災検知器というのは、そうそう完全なものとも言えないのです。
そのへんのことを、前回まったく触れていなかったので、ちょっと補足的な話を書いておきたいと思います。

まず、F-15の操縦マニュアルによると、エンジン収容室の火災を検知するセンサーは、デュアル・ループ式の熱センサーで、アフターバーナーの燃料スプレー・バーの手前までに取り付けられています。

つまり、アフターバーナー・セクション以降の部分には、機体に火災検知センサーがありません。
下の図はF-15のF110-100や-220Eとは少し違いますが、基本形式が同じF110-229のイラストです。
この後ろの方(図の右側)にあるAfterburnerセクションを収める部分には、火災検知センサーがないということです。

ここには燃料配管もないし、そもそもアフターバーナーは「エンジンの後ろで燃料を燃やす」仕組みですから、そこで熱を検知して「火災」と判定しては困る、ということかもしれません。

なので、もし燃料漏れなどによって機体の最後方で火災が起きると、火災警報が作動しないこともあるのではないか、ということを僕は考えたのです。

これについては、さらに調べたことを後のエントリに書きましたので、お読みください。

ちなみに、F-15の火災警報はコクピットの左上、見やすいところにあります。

もし、警報が作動しない箇所に、漏れた燃料などが溜まるなどして火災が起き、それが燃料タンクなどに引火爆発するまで、またはその直前まで、警報が作動しないままだったら、パイロットは対処する余裕さえなかった可能性があるのではないか、と思うのです。
だとすると、管制官が見たという「オレンジ色の光」は、機体が爆発したときのものであったかもしれません。

また、火災警報が点灯しても、パイロットは反射的には行動しません。つまり、即座に脱出したり、緊急宣言をしたりしません。
誤警報の可能性を疑ったり、機体の状態を確認したりするため、次のアクションには少しの時間がかかるものです。

ただ、あまり詳しく調べたわけではなく、十分な検証や調査をする手立てもありませんから、これはあくまで一つの仮説です。


小松基地のF-15墜落事故について 前回エントリの補遺」への5件のフィードバック

  1. なるほど。
    画像が不鮮明なのですが、回収されたノズルの一部だけが不自然に変色して、その先が失われているように見えます。

  2. 今ネットニュースを見ました。
    確かにエンジン排気口部の一部が焦げて焼損しているように見えますね。
    やっぱり外部で火災が起きていたのではないかなあ、と思います。

  3. 私も画像見た時に左エンジンの光?不自然に感じました。
    エンジン内部の配管から燃料若しくはオイル類の漏れが発生し排気口で火災、そこから広がり燃料タンク等に着火、空中爆発した可能性があるかと。
    垂直尾翼が発見されていることを考えると空中爆発で機体が壊れ尾翼がそのまま沈んだのでは?
    機首から海に突入すると尾翼系はバラバラになると思います。
    火災警報ですが旅客機ならいざ知らず戦闘機なので警報で知らせる目的より消火装置を作動させるのが主目的なセンサーじゃないでしょうか?

    1. 旅客機の場合、エンジン・ナセルだけでなく、無人の貨物室にも火災や煙の探知機があって、消火装置も備えられています。
      旅客機では、各エンジンに2回の消火剤噴射ができなければいけない、という規定がありますが、F-15の場合は1回きりです。
      F-15で火災警告灯が点いた場合、警告灯を押すとそのエンジンへの燃料供給が止まり、消火剤が自動充填されて、噴射できる状態になります。
      これで警告灯が消えなければ消火剤を噴射し、それで駄目なら脱出です。
      状況を確認しながら、この流れを実行するには、それなりの時間もかかります。
      その間に引火・爆発が起きたら助かりません。
      秒を争う事態では、無線による非常事態宣言も後回しになります。

  4. こんばんは。丁寧な解説、ありがとうございます。
    離陸直後に燃料漏れなどで火災発生、ちょうどセンサーもないところで気づくのが遅れマニュアルに従って操作していたらいきなり空中爆発ですか。
     機体後部の、高温につき無塗装部が焼損してるならそういうことなのでしょう。
     大ベテランが日常の訓練で、何も足掻けずにいきなりドカンで亡くなったのはさぞや無念、悔しいことでしょう。片翼が捥げてもなお操縦可能で同士討ち以外ではほぼ撃墜されたこともなくタフな機体、しかも2人搭乗で墜落死亡事故なのですから実に嫌な奇跡です。飛行機を日々飛ばすということは実に緊張感のある仕事なんだなあとあらためて感じ入るばかり。少しでも早く詳細な事故原因がわかり対処法が実行されますように。

ひろにゃん へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください