【読書】オーバースペック(未須本有生)

著者はFS-X設計チーム(FSET)で一緒だった人で、これまでにも何冊かの小説を上梓しています。
今回の『オーバースペック』は、自衛隊のT-4練習機をモチーフにして、これに戦闘機能を与える改修を試みるというストーリーです。

作者の人柄を知っているので、読んでみると「ああ、未須本さんらしいなあ」と思うような話でした。
会社とか官庁という組織に従属するサラリーマンの体質について、皮肉な視点をもって書かれています。

実際に飛行機の開発に関わった経験から書かれているので、それなりに技術的なリアリティをちりばめてありますが、そこは小説なので、現実の開発の様子は、書かれている雰囲気そのままというわけではありません。
実際の開発には、とても多くのプレイヤーが関わり、複雑なプロセスを踏まえていくので、それをそのまま表現しようとしたら、小説として成立させるのは難しいです。
過去作もそうですが、この作品では複雑な関係を数人の登場人物に集約し、ほとんど限界まで単純化して、どんな人でも読みやすいお話に仕上げています。

作品の設定では、T-4練習機が戦術機としての発展を見越して設計されている、と仮定されていますが、これはあくまで「お話」です。
しかし、T-4後継機とか発展型という話は、これまでにもいろいろ構想されていることは事実で、特に後継機のことは真面目に考えないといけない時期です。
日本政府はアメリカの顔色を伺うばかりなので、ちっとも具体的な話にはならないまま、時が過ぎています。

韓国のT-50とか、ロシア/イタリアのYak-130/M-346あたりが、作中のイメージに近いと思いますが、そうなると初等練習機との格差が大きいので悩みどころです。
ほんとうは、初等練習機にもうちょっと高性能機を持ってきていればよかったと思いますが、今となっては後の祭りですね。
どうなることでしょうか。


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