2016年12月13日夜、沖縄県名護市の沿岸にオスプレイが不時着し大破した。
ニュース等によれば、夜間空中給油訓練中に、給油機からの給油ホースが切れて、オスプレイのプロペラ(プロップ・ロータ)を破損したのが原因だという。
ただし、何らかの理由で切れたホースが当たったのか、プロペラに当たったことでホースが切れたのか、そのあたりははっきりしない。
いずれにしても、ホースが当たったことでプロペラが破損したことは確かなようだ。
さて、プロペラを破損したオスプレイはどうなるか。
通常の双発飛行機なら、破損したプロペラ側のエンジンを止めて、片発飛行で帰還すれば良い。
しかし、オスプレイの場合はそうは行かない。
オスプレイは、片方のプロペラを止めて飛行することができないのだ。
このあたりは以前のエントリ「オスプレイの安全性を考える – ハザード検討の一例」に詳しく書いた。
すなわち、今回の事故は、通常の双発飛行機であれば不時着大破や墜落などという事態には至らない事象であり、プロペラ不具合に対するオスプレイの脆弱性が顕在化したものといえる。
では、ヘリコプターと比較してではどうか。
ヘリコプターの場合も、ローターの機能に障害が出れば、墜落もしくは不時着を強いられることになるだろう。
空中給油の際に、ローターがホースに触れてしまえば、オスプレイと同じことではないのか。
これについては、件の軍事ブロガー(笑)JSFさんが、興味深い動画を教えてくれた。
(もちろん既知の動画だが、わざわざtweetで教えてくれたJSFさんに敬意を表して引用させていただく)
@booskanoriri @playmate62 CH-53の事故例。 https://t.co/haD2QbPD5x これもかなり珍しい事例でしょうけどね。今回の夜間空中給油訓練はオスプレイの機体欠陥とは公式にも見做されないので、いくら欠陥だと騒いでも無駄です。
— JSF (@obiekt_JP) 2016年12月14日
この動画では、CH-53ヘリコプターが空中給油中にピッチングを起こし、ホースではなく自機の受油プローブをへし折っている。
JSFさんは、これを示して「CH-53も危険だ」と言いたいのかもしれないが、そうだろうか。
だって、このCH-53、ホースよりも強度の高いであろう金属製のプローブをへし折っているが、その後も平然と飛行しているではないか。(笑)
そう、ヘリコプターのローターが空中給油中にホースに接触しても、ただちにローターが破壊されるようなことは、まずない。
ヘリコプターもバカではないから、ローターにそれなりの強度を持たせているし、ホースだって無用に強いわけではない。
では、オスプレイのプロペラは、なぜ壊れてしまったのか。
オスプレイのプロペラは、ヘリコプターのローターよりも弱いのか。
弱いのである。わざわざ弱く設計してあるのだ。
オスプレイは通常ヘリコプター・モードで離着陸するが、なんらかの理由で、飛行機モードで不時着陸しなければならない場合もある。
(今回の事故でも、飛行機モードで不時着している。)
滑走路等に飛行機モードで不時着する場合、プロペラが大きいため、そのままでは地面に接触してしまう。
その際、プロペラの強度が強すぎると安全に不時着できないため、地面に接触したプロペラは、竹箒のようなささら状に壊れるようにしてあるのだ。
つまり、オスプレイのプロペラはヘリコプターのローターほど強くはない。それが設計の仕様なのだ。
以上のことをまとめると、次のように言えるだろう。
空中給油時のホースとプロペラ(ローター)の接触インシデントに対して、オスプレイは
- 双発飛行機のようなロバスト性(強健さ)はない
- ヘリコプターほどのロバスト性もない
ということだ。
つまり、オスプレイはこの種のインシデントに対して、従来の航空機よりもずっと脆弱なのである。
おまけに、オスプレイはプロペラの描く円盤面積が大きく、この種のインシデントを起こしやすい。
これはオスプレイの設計上の仕様であり、免れ得ない特徴だ。
今回の事故を受けて、米軍は”「オスプレイの機械的なシステムの問題ではない」として、機体の問題でないことを強調した”(朝日新聞より)という。
これを受けて、件の軍事ブロガー(笑)JFSさんも「今回の夜間空中給油訓練はオスプレイの機体欠陥とは公式にも見做されないので、いくら欠陥だと騒いでも無駄です。」と上記に引用したtweetで仰っている。
僕はJSFさんのいう「欠陥」というのが何をイメージしているかわからないし、何が無駄なのかもわからないが、とにかくJSFさんはオスプレイが無謬の乗り物だと言いたいらしい。笑止である。
上記に示したように、空中給油という運用(オペレーション)に関わるハザード・リスクに対して、オスプレイは従来の航空機よりも脆弱である、ということは事実であり、その事実がはしなくも今回の事故で示されたといえる。
とはいえ、僕は以上の事実を持って「オスプレイは危険だー!」と叫ぶつもりはないのである。
これも以前からの繰り返しになるが、こうしたリスクを十分に認知したうえで、安全な運用を行っていくことが必要なのだ。
ただし、このような脆弱性を抱えている以上、空中給油という高リスクの運用について、運用者は従来以上に慎重な対応が求められる。
そして、重度の難治オスプレイ信仰者であるJSFさんには、ご病状の安定をお祈りする次第である。
おまけ
12月15日のTBSのひるおび!の八代英輝のオスプレイの擁護をご覧になりましたか?
週刊オブイェクトのJSFとそっくりで悪い夢を見てるのかと唖然としました。
概ねこんな感じです。
1.アメリカの民間ヘリより事故率が低い
2.人為的ミスが事故原因だから機体の安全性には問題ない
booskanoririさんの苦労が全く報われませんね。
コメントありがとうございます。
八代英輝さんという人を知らないのですが、TV番組でそのような発言があったというのは、twitterで知りました。
JSFさんと同じ、ありがちな素人評論ですね。(笑)
とはいえ、原発の話などもそうですが、システム安全性の話は、一般の人には敷居が高いのも事実だと思います。
日本には、残念ながら航空機工学やシステム工学に通じた航空評論家もいません。
航空評論家を名乗りながら、実はただのマニアだったり雑誌編集者出身だったり、素人評論ばっかりです。プロと呼べるのも、せいぜい民間航空のパイロット出身者くらいです。
このブログでは、いくつかの飛行機の開発に携わってきた飛行機屋の視点で、書きたいことを書いていこうと思います。
まず、ド素人であることを申し上げます。で、素朴な疑問ですが、ローターがホースを引っ掛けた事故であるなら、設計をし直して、オスプレーの後部からホースが垂れるようにして、給油機が後ろから寄ってきて、給油プローブをホースに突っ込む。まあオス・メスが逆転して、しかもお釜を掘るというスタイルですね。(下品な表現はごめんなさい) こうすれば、少なくともローターがホースを引っ掛けるという事故は防げそうです。でも、こういう設計は技術的には可能なんでしょうか?
コメントありがとうございます。
仰るような方法での空中給油も、時間と手間をかけて開発すれば、技術的には不可能ではないだろうと思います。
しかし、現在の空中給油技術は、長い時間をかけた開発と経験の蓄積によって確立された技術であり、これに代わる方法として開発するには、とてもハードルが高いと考えられます。
本事故のようなリスク低減策として考えるならば、ホースの材質や、オスプレイのプロペラの設計改善などの方向が、現実的なのだろうと思う次第です。
12月15日のTBSのひるおび!見つけました。
https://www.youtube.com/watch?v=21HsDmogTrU
43分から44分にかけて
「普通のヘリより圧倒的に事故が少ない、事故の原因はほとんどが人為的操作ミスなんですね。危ないというイメージが」
要約すると、事故率が低い、人為的ミスだから機体の欠陥ではない
booskanoririさんの苦労も報われませんね。
なるほど、人的ミスだから問題ない、という訳のわからないことを言っていますね。(笑)
その人的ミスを生じせしめる設計や運用が問題なんですけどねー。
返信ありがとうございます
動画も御覧になってくれたんですね。
booskanoririさんがTBSに呼ばれて八代英輝を血祭り(勿論、隠喩ですよw)にあげるチャンスが来る事を願っております。
そんなに「安全」なら、首相専用機にしたら?と思います。序でに政府幹部の移動は全部これでやるとか。色んな意味で一石二鳥ではないかと。(笑)
アメリカでは大統領専用機のオスプレイもあるので、オスプレイにもそれなりの信頼性はありますよ。運用の方法と場面次第では、オスプレイも従来の航空機と大差なく使えるとは思います・・・。
オスプレイのプロップローターが地面等に接触した場合にバサバサの箒状になるのは、従来ヘリのローターが地面等接触では破壊飛散して破片が乗員や周囲に危害を与えることになるのを防ぐのが目的ですので、これをもって「オスプレイのローターはヘリのローターより弱い」と結論するのはどうでしょうか。
ビデオのCH-53の例と今回の沖縄での件とでは事例が異なりますし事故の詳細は未だ解らない段階です。CH-53のような接触では受油プローブはかなり弱いでしょうしこれを比較事例として何か結論つけるというのもどうでしょうか。
普通の固定翼双発機が所謂片肺飛行が可能なのに対し、オスプレイは片ローター機能喪失の場合はそれが出来ませんが、回転翼機の場合は片ローター機能喪失では落ちるだけなのに対しオスプレイは滑空(滑空比基本4.5:1とか)で不時着出来る可能性を有していることになります。
検索でたどり着いたので感じたところの記念コメントです。
航空エンジニアの専門家の方に対して素人が的外れな戯言おゆるしあれ。
色々と参考になるブログですのでご健闘を祈っております。 でわ。
コメントありがとうございます。
私も改めて考えを巡らせてみましたが、オスプレイのブレードは、地上接触時に箒状に壊れるようにするため、コードワイズ(幅方向)の強度が弱くなっていると考えられます。
これは耐FOD(異物衝突ダメージ)性とは二律背反の関係になると考える次第です。
ヘリコプターのローターでは、一方向性の複合材を交差させるように積層(クロスプライ)する構造になっているなど、異物衝突時の損傷が進展拡大しない特性を持っています。
これに対してオスプレイのブレードでは、スパンワイズ(長さ方向)に損傷が進展してしまうと思われ、防衛省が発表した今回の事故状況でも、損傷がだんだん進展していったことを示唆しています。
また、ヘリコプターでも、軍・民の運用で数多くのローターFOD事例があります(工具とぶつかる、など)が、今回のオスプレイ事故のような重大事故に繋がった例は、ほとんど聞きません。
これらの考察と経験的知見から、オスプレイのブレードは、ヘリコプターのブレードよりも、異物衝突に弱いと結論づけて良いのではないかと考えています。
また、ローター機能の完全喪失を考えると、滑空できるオスプレイのほうがヘリコプターより有利、というのはその通りです。
しかし、滑空比4~5のレベルで、とりわけ今回のような夜間海面への不時着というような状況では、まず生還の見込みは薄いのではないかというのが、正直な感想です。
オスプレイの滑空性能は、ほんとうに最後の手段、悪く言えば気休めに毛が生えたくらい、ではないかな、というのが、個人的な思いです。
早速に名前表示をかえていただき恐縮です。
「三船敏郎」はさすがに照れくさく、「林家三平」くらいでよかったのですが。
「耐FOD特性がオスプレイのブレードは従来ヘリより劣るであろう」との考察興味深いです。
このような機体の戦場での運用では、砂塵・石ころ・樹木の小枝大枝・干してある土人のふんどしや腰巻等々色々なFODが有り得、ブレードを叩くことになるわけですが、オスプレイの耐FOD特性が従来のヘリより劣るような場合には、CH-46をリプレースして戦場に送り、海兵隊の空中機動力として従前同様に運用することなどとても出来ない相談になるわけですが、なにかそういった資料などがどこかに出ているのでしょうか?
あるいは「オスプレイのブレードのFODに関するRequirements(要求仕様)は従来ヘリよりも緩い」、といった資料がありますでしょうか?
ご指摘の通り戦地に限らず平時でも色んなFODは有得ますし、特にオスプレイのような大型チルトローターでは猶更でしょうか。現在の海兵隊でのMV-22や空軍のCV-22の採用・運用状況を眺めた場合、FOD特性が従来ヘリよりも劣ると結論することには少々疑問が湧くところになるわけです。
頭で理論的に考えた考察は検証しないといけないわけですが、オスプレイのブレードの材料・構造などをご存知であれば供試体でも作って強度試験でもやってみれば解るのでしょうがね。
陸自でも導入する?のだとか聞きますし、安全第一ですから安全を確認できる資料がもし米側から提供されないのであれば、安全の確認の要あることでしたら何とかいうメガネ防衛相女史も予算出すでしょうし・・・
滑空比ですが、スペースシャトル並でしたらそんなに悪くはない感じです。
ぼくはスペースシャトルでの着陸一発で成功してます。
もちろんおもちゃのシュミですが・・・
エマージェンシーですから贅沢は言えません。
オスプレイに乗られるときはオートローテーションよりも滑空がおすすめです。
嫌なのはあのマルチプル?何とか言う四角い画面ばかりの丸計器の無い操縦席ですね。
電源が入ってないと真っ暗ですよ。
やはり航空機と言うものはアナログの電源無しでも機能する丸型計器がないとね。あれでは、もし東京電力が停電にでもなったら一体どうするのかと!
戦場で使うような機体の耐FOD性が低いというのは解せない、というご意見、私も同感なのです。
ただし、例に挙げていただいたような砂塵、小石、小枝等に対する耐エロージョンには、オスプレイもちゃんと配慮していて、プロップ・ロータの前縁にアンチ・エロージョン・ストリップとして、金属板を当てています。
この対策で、質量の軽いFODには対応できるでしょうが、今回のように質量の大きなFODでは、プロップ・ロータの主構造に破壊が及んでしまうというわけです。
耐FODのRequirementについては、めぼしいMILスペックを探してみましたが、プロペラやロータに関しては要求が見つかりませんでした。
強いて言えば、FAAの機体全般に対する鳥衝突要求で、固定翼では4LBS、回転翼では2.2LBSの鳥に対する耐衝突性が要求されているくらいです。
不時着時の破壊特性に注力した一方、耐FOD性が疎かになってしまった、というのがオスプレイの現状だと思います。
素人おやぢの戯言に丁寧なご回答おそれいります。
今回の沖縄でのオスプレイの事故については調査中であり報告書を待つ以外ないわけで、報告書は今後オスプレイのユーザーになる日本の防衛省も受け取ることでしょう。
(自衛隊も昼夜間問わずオスプレイの空中給油訓練は当然行い、その持てる能力を最大限発揮できるようすることと思われますので関心は高いはず。関心が無いようだと困りますねw)
タンカー側の給油ドローグの「ホース」とは言いましても先端の結合部は金属でありホース自体もそれなりの強度がありますし、当たり方次第ではオスプレイもヘリもあるいは固定翼ジェットなど如何なる航空機であっても重大な損傷を受ける可能性はあるものです。
全部調べたわけではありませんが、空中給油中のオスプレイの重大事故というのは今回が初めてでしょうか。
既に数百機が部隊配備されているそうですので空軍や海兵隊の用途からして昼夜間問わず日常的にオスプレイの空中給油は行われていたのでしょうし、今回のは稀な事故とも言えるでしょうか。
原因が解ってはじめて、空中給油時のプロシジャー(機体操作手順ゃ確認など)に問題があったとか、おっしゃるようなオスプレイのブレードの強度に問題があるのだとか、或いは給油・受給どちらかの機体の構造上の問題があるとか、NHKの天気予報に問題があったのだとか、その改善・改良すべき点が明らかになるわけですので、詳細が解らぬままにあまり外野で騒いでも仕方がありませんね。
報告書をまちましょう。
しかし、オスプレイのローターブレードの強度に問題があるとなると、今回の事故は実は接触したゴムの給油ホースは無傷で無事。 オスプレイのローターブレードだけが折れてた!
だったりしてw
エントリ公開からだいぶ経過してのコメントになりますが、以下の点に関しましてひとつ。
>アメリカでは大統領専用機のオスプレイもあるので、オスプレイにもそれなりの信頼性はありますよ。
実際に要人が搭乗するのは海兵隊の大統領輸送飛行隊HMX-1所属機のうち、「ホワイトトップ」と呼ばれる塗装を施されたVH-3D、VH-60Nの二機種、いずれも通常の回転翼機ですね。
HMX-1では支援機として運用していたCH-46Eの代替機としてMV-22Bを導入しましたが、基本的には支援人員や随行員が乗るものでホワイトトップ塗装も施されておらず、大統領が乗ることは滅多にありません。
揉めに揉めたVH-3D後継機はVH-71(計画破棄)、VH-92とそれぞれコンベンショナルな回転翼機が選定されていますので、いかな海兵隊といえどもティルトローターを日常的に大統領の移動に使うということは当面なさそうです。
仮にVH-60Nの代替機としてティルトローターを考えた場合、AW609や将来のスタンダードになるかもしれないV280バローが該当するかと思いますが、VH-60Nを海外展開させるときと同様にC-17A輸送機で空輸できないのであれば、やはり採用は難しそうです。
MPT様
詳しく教えていただき、ありがとうございます。
VIP機というのは私の早とちりでしたね。
先のコメントは訂正致します。
ご教示に感謝します。
初歩的な質問になりますが、よろしくお願いいたします。
1/5防衛省発表の報道資料「MV-22オスプレイへの空中給油再開について」 http://www.mod.go.jp/j/press/news/2017/01/05a.html で空中給油訓練での事故状況の概要を読み疑問に思ったことですが、給油ホースとオスプレイのブレードが予期せぬ接触をしブレードが損傷した。その後回転し続けることで破損度合いが増し、飛行の安定性が保てなくなり、目的地に到達できず着水した。という内容でした。
右側のプロペラのブレードが破損したということなので、片方のプロペラを止めればいいのになぜ止めなかったのか、という疑問が浮かびました。その後ウキペディアの説明で、オスプレイは片側のエンジンが止まっても二つのエンジンは駆動シャフトでつながっていて二つのプロペラは回り続けることが出来る(各々1/2の出力で)、ということを読みました。ということは、止めることで損傷度合いが増すことが分かっていながら止めることが出来ない構造になているのか?ということも考えに浮かび、疑問が深まるばかりでした。
友人の紹介でこちらのブログに接し、ぼくの疑問についてもアドバイスいただけるのではないかと思い、コメントさせていただいた次第です。
オスプレイという飛行機は片側のプロペラを意図的に止めて飛行(飛行機モード)できない構造になっているのでしょうか?
あるいは両側エンジンを連結している駆動シャフトの連結を解除するクラッチがあるが(?)何かの要因(パイロットの理解不足、ホースとブレードの接触が影響した不具合の発生等)でそのクラッチがうまく働かなったのか?
よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。
まず最初に、オスプレイは、片側のプロペラを止めると、止めた側に機首を振られる力が非常に大きくなるため、飛行を続けることができません。
普通のプロペラ双発機なら、垂直尾翼の働きで機首を真っ直ぐに保つことができますが、オスプレイの場合はそれができないほど左右推力のアンバランスが大きくなるので、片方のプロペラでは飛ぶことができないのです。
(こちらのエントリ→ http://booskanoriri.com/archives/2565 も参照ください)
従って、壊れたプロペラを止めなかったのは、パイロットのミスや機体側の不具合というわけではありません。
もしプロペラを止めるとすれば、「両方とも止める」しか選択肢がないのです。
また、オスプレイは、両方のエンジンが正常な場合、左右のエンジンは、連結シャフトを通さず、各々の側のプロペラだけを駆動するようになっています。
片方のエンジンが不具合を起こした場合のみ、左右の連結シャフトを通して駆動力を配分する仕組みです。
これは推測ですが、「片側プロペラを意図的に止める」という操作は、オスプレイに関しては構造的に不可能になっている、と思います。
それは必ず墜落に至る操作であり、そういう操作を許す意味がないためです。
どうもありがとうございます。
普段は、左右プロペラの回転をそれぞれ逆回転することで回転反作用を打ち消しあっているが、片側だけ止めると大きなプロペラのオスプレイでは安定飛行が困難になってしまうほどバランスが大きく崩れてしまうという理解でよろしいでしょうか。また、大きなプロペラを両翼先端で使用する機体の構造上の特性ととらえられるとも考えてもよろしいでしょうか?
ほんとにお忙しいところありがとうございました。
すみません、お答えを誤読していました。
止めたエンジン側がブレーキになり、止めた側に引っ張られてしまうということですね。大きなプロペラなので、動力がない状態では、フェザーモードでも空気抵抗が大きくなるのが原因ですね。
重ね重ねありがとうございました。
概ねご理解のとおりです。
ただ、オスプレイのプロペラは、片側を止めるというケースがあり得ないことから、フェザリングもできないようです。
左右のプロペラが離れているという特徴のため、不均等推力によるヨーイング・モーメントが大きい、というわけです。
ご丁寧な対応に感謝感激です。
冷静で事実に基づく記事を書かれ、敬服しております。
大変勉強になりました。本当にありがとうございました。
今回の事件を受けて、久しぶりにこちらのサイトをのぞいてみました。
コメント欄が賑わってるのを見てどこからかオスプレイ擁護派の人たちが来たのでは?と心配になりましたが、どうやら大丈夫なようでよかったです。
今回の件は、空中給油の際に最も注意しなければならない点になったでしょうから今後の運用に気を付けてほしいです。正直、左右の殴り合いは無視して平和に空を飛んでくれるのが自分的には一番ですね。
どっちにしろ、オスプレイは叩かれすぎてる面と持ち上げられすぎてる面しか目立たずに、冷静な中道的意見が世間に流されてないのが問題だと思いますね。ハリアーの方がよっぽどイロモノで危なっかしい(事実9月に墜落)と思いますが、左はだんまりで右はオスプレイの事故率の比較対象に挙げるだけで問題にしようとしませんし…。一体どうなっているんでしょうかね。
いつも温かいコメントありがとうございます。
このエントリは、ホットなニュースに触れているためでしょうが、多くのコメントをいただきました。
ご心配いただいたように、いわゆるオスプレイ擁護派の人たちが見当違いなコメントを付けて来られるんじゃないかと思いましたが、多くの皆さんは、事実としてどうなのか、に関心をお持ちのようで、私も少しホッとしました。(笑)
これまでのエントリでも書いたように、オスプレイには既存機にない技術的問題があり、仰るとおり、運用上の課題があります。
オスプレイという航空機について議論を深めるのであれば、こうした客観的、技術的な事実を踏まえることが必要です。
しかし、基地問題、政治問題との関係から、技術的に間違った理解も含め、見当違いの議論が多いのが、残念ながら現実ですね。
本ブログでは、冷静な議論に資することができるよう、できるだけ純粋に、技術屋の目から見た課題を示したいと思います。
今後とも、よろしくお願い致します。