前回のエントリで航空機の雷対策について書いたが、その後でwebサイトを検索して廻ってみたら、あちこちでいろんなことが書かれていた。しかし、国内のサイトを見る限り、あまりに間違いが多く書かれているのに驚いた。
中でも酷いのは、放電索(Static Discharger)が避雷針の役割をするという誤解。
この All Aboutの記事でも、落雷から機体を守る「静電放電装置」と題して、類似の間違いを書いている。
また、Wikipedia日本版の「放電索」の項でも、「落雷等による電荷もここから放電する。」と、間違ったことが書かれている。
(一方、Wikipediaアメリカ版では、“Static dischargers are not lightning arrestors”として、放電索が避雷針ではなく、被雷機会に影響を与えないと明記していて、耐雷性と関係づけた記述もない。さすがは航空大国と言うべきか。)
ここではっきり書いておくが、航空機の放電索は避雷針の役割をするものではない。放電索は、あくまで、空気と機体の摩擦で発生する静電気を逃がすためのものだ。
そして、機体に落ちた雷撃の電流も、放電索から逃げるわけではない。雷撃は、機体の端部から入り、別の端部から抜けるのが一般的だ。
なお、雷撃を受けた航空機は、着陸後に放電索の機能も含め、入念な点検を受けるが、その際、放電索が千切れ飛んだり、焼け焦げ、溶けている例は多い。雷電流が放電索を抜けるようなケースでは、放電索など簡単に溶けてしまうのだ。つまり、雷撃のエネルギーは、とても放電索で放電できる程度の代物ではない。(当たり前だが)
しかし、どうして日本では、デタラメを書いているサイトが、これほど多いのか。
評論家と自称する人たちは、知らないことでも知ったように書かなければ飯が食えない、という事情もあるだろうが、いいかげんにしてほしいと思う。
まあ、こんな話題は、ほとんどの人にとっては、間違っていても困らない話なので、他愛の無い話のネタにすぎないとは思う。
でも、間違った知識が、正されもせず一人歩きするのを許すような風潮は、どうにも気味が悪い。
===== 以下、ググってすぐに見つかった眉唾な『知恵袋』の数々 =====
All About ヒコーキと落雷
Yahoo!知恵袋 航空機の雷対策はどうしているのでしょうか?
Yahoo!知恵袋 飛行機に雷が落ちるとどうなるのですか?
はじめまして。「放電索」で検索してたどり着きました。
私も知恵袋を見ましたが、ベストアンサーに選ばれた答えだけを見ていたらてっきり落雷の際にも役立つのかと思うところでした。
はっきりと違うと書いていただいてありがとうございました。
ちなみに、飛行機の先端のヒゲのようなものも同じ役目なのかと思ったら、こちらは「ピトー管」という速度をはかる機器でした。
ではでは。乱文失礼いたします。
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コメントありがとうございました。
拙いblogですが、お役に立てれば嬉しいです。
はじめまして、最近飛行機に乗ることが増えた為、窓から見える放電索に興味をもち、いろいろと調べていました。静電気を飛ばす事は調べてわかったのですが、雷は流石にダメなのですね。正しい情報をありがとうございました。そう考えると、知らないでいる事って怖いなと思いました。
見ていてとても楽しいブログですので、また見させていただければ幸いです。
飛行機の窓からではわかりにくいのですが、放電索の形状や太さが気になって仕方がありません。あれは機体の大きさなどで形状や素材が変わるのでしょうか?
拙いブログを御覧いただき、ありがとうございます。
航空機の大きさなどによって、様々な放電索があります。
大型の旅客機などではアンテナのような形をしたものが主流ですが、軽飛行機などではゴム紐のような形の放電索も使われています。
いずれにしても、航空機が被雷したときなどは溶けたり破損したりするので、交換しやすいようになっています。
booskanoriri様
ありがとうございました。とても勉強になりました。
軽飛行機の物はこんな形をしているのですね。
車のアンテナの先を金属にした様な感じですね。
JAXA発行の機関誌「空と宙」にも放電索が落雷のエネルギーも放電すると書いちゃってます。
P.7 航空機と気象条件 を参照
http://www.aero.jaxa.jp/publication/magazine/pdf/sorasora_no26.pdf
まぁ溶けるということは多少逃げてもいるんでしょうけど…
コメントありがとうございます。
ホントですね。(^^;)
現実には雷撃電流に対して放電索は無力に近いんで、この「空と宙」記事で放電作について触れるのは蛇足の感があります。