ボーイング787の翼胴結合部における構造強度不足について

初飛行が遅延している新型旅客機ボーイング787について、再び延期が報じられました。
Flightglobalの報道では、ボーイング787の静強度試験において、主翼(三菱重工製)と中央翼(富士重工製)の結合部で、主翼ストリンガーキャップの強度不足がわかったとのこと。
中央翼(center wing box)というのは、左右の主翼を結合する役割を担う、胴体の中に隠れてしまう構造体のことです。ストリンガーキャップというのは、主翼の長手方向に走る縦通材(ストリンガー)の端部でしょう。
で、面倒くさいことに、ボーイング787の主翼では、ストリンガー(縦通材)とスキン(外板)が一体で成型されているので、ストリンガーだけ設計変更したものに交換する、ってことができないと思われます。
シアトル・タイムスの記事によると、三菱重工は、今回の不具合について「ボーイングの設計に起因するもの」といい、ボーイング側も「三菱の設計に責任はない」と認めているようです。

Kiyotaka Ichimaru, an executive at the aerospace division of Mitsubishi Heavy Industries (MHI), which makes the 787’s carbon-fiber composite plastic wings in Japan, also said the problem announced Tuesday stems from Boeing’s engineering design, not MHI’s ― an assessment confirmed by Boeing.
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Boeing spokeswoman Yvonne Leach agreed that MHI had no responsibility for the design problem.

つまり、三菱ではボーイングが提示した設計条件で細部設計と製造を行ったのだが、当該箇所には与えられた設計条件以上の負荷がかかっていた、ということでしょう。飛行機の開発ではよくあることです。
たぶん今頃は、設計変更に向けての技術作業と並行して、三菱とボーイングの帰責割合(責任の分担比率)について熱い協議が行われているでしょう。
まあ、今回はボーイングがいちおう自社責を認めていますから、それほど揉めずに済むのかな。
なかなか飛べない787ですが、早急に今回の不具合を解消し、大空に羽ばたいて欲しいものです。
航空機の構造力学—amazon.co.jp


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