故江畑謙介氏に批判的なblogが炎上

江畑謙介氏の訃報に関してネット上を徘徊していたら、民主党の議員が書いたブログが炎上していました。
更に、この有様はJ-CASTニュースでも報道されていて、注目度の高さが伺えます。
問題のブログでは、「本当の意味で軍事専門家などいない」日本において、江畑氏は

 擬似専門家としての役割を果たした

と総括されています。そして、

 でたらめな評論家に比べれば、はるかに中立的で高いレベルの情報提供

という、一定の評価をしたうえで、その逝去を悼んでいます。
しかし、その一方では、江畑氏を「ある意味、軍事オタクのハシリのようなもの」として、

 まったく紛争地や実際の戦場に足を運ぶこともなく、兵器という切り口だけで戦争を論じる、日本にしか生まれない特異な軍事評論家だった。

と、オタク批判とも言える評価が下されており、「姿勢が自民党寄りだった」と書かれていたことも、江畑氏を崇敬する「軍事オタク」の人たちには面白くなかったようです。(笑)
しかし、この「擬似専門家」という言葉は、江畑氏への賛否を問わず、ピッタリな表現だと感心しました。
専門用語を上手に並べて、分かりやすく解説するスタイルと、落ち着いた語り口が人気を呼んだ江畑氏ですが、ホンモノの専門家ではありません。軍人の経験がないばかりか、防衛大学校で学んだり、兵器を作ったこともないわけですから。
とは言え、ホンモノの専門家である自衛隊関係者や防衛産業関係者は、公の場で見識を述べることができません。そこで、オタク的な知識が豊富な江畑氏が、「擬似専門家」として社会的ニーズに応えたのです。
擬似専門家という表現は、江畑氏が社会において果たした役割を言っているわけです。
ところが、社会が江畑氏に求めたのは、戦略・戦術から兵器技術、航空技術など、誠に広範な分野にわたる解説でした。これでは、いくら江畑氏がプロのオタクであっても、荷が重過ぎるというものでしょう。
結果、江畑氏の書いた本には、デタラメな航空技術解説がテンコ盛りです。(泣)
私は飛行機屋なので、戦略・戦術などの兵法や、陸上兵器のことなんかは、よくわかりません。(仕事柄、普通の人よりは詳しいかもしれませんが・・・。)ですから、そういう分野については、江畑氏の解説が正確なのかどうかは、何の論評もできません。
でも、航空兵器についての江畑氏の理解は、少なくとも技術的な部分については、酷いものでした。(ごく一例を次回のエントリに書いておきました。)
しかし、この日本という国では、それについてホンモノの専門家が異議を唱える機会がありません。
これは、江畑氏の解説を真に受けた一般の人(軍事オタクの人を含めて)たち以上に、江畑氏本人にとって、誠に不幸だったと言わざるを得ません。江畑氏は、誠実な人柄だったようですから、親身になって間違いを指摘する人があれば、たぶん真面目に耳を傾けただろうと思うのですよ。
さて、江畑氏亡き後も、日本の社会的状況は変わりません。
また別の誰か(飛行機マニアの漫画家の息子とか、航空雑誌社社長の息子とか)が、同じように「擬似専門家」としてお茶の間に登場して、同じことを繰り返すだけでしょう。
実は、私も江畑氏には何度かお目にかかったことがあるのです。
とうとう直接お話する機会はありませんでしたが、物腰の柔らかな紳士で、巷間で言われているような人柄の良さが伺えました。
ご冥福をお祈りします。


故江畑謙介氏に批判的なblogが炎上」への1件のフィードバック

  1. (続)故江畑謙介氏に批判的なblogが炎上

    はてなブックマークからのアクセスがあったので、ちょっと嬉しくなって、補足エントリを書きます。(笑)
    読んでもらえると嬉しいです。

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