テセウスの船

Twitterアカウントを再び凍結されたのだけど、そのTwitterのトレンド・ワードに「テセウスの船」というのが出てきた。
あまり人口に膾炙している言葉ではないと思うのだが、どうやらテレビドラマのタイトルになっているようだ。

テセウスの船というのは、ある物体の部分をどんどん取り換えていって、本来の部品がなくなってしまっても、それは同じものと言えるのだろうか、というパラドックスである。

飛行機の世界でも、長く使われるうちに多くの部品が交換されていくが、主要な構造を取り換えることは稀なので、あまり「テセウスの船」問題に突き当たることはない。
多くの場合、製造銘板が貼られていたりするのは、最後まで交換されることのないような主要構造である。

しかし、中には例外もあって、なんらかの理由で「主要構造」が取り換えられてしまうことがある。
となると、テセウスの船とは少し意味合いが異なるが、個別の機体識別に関わる問題が発生する。

ずいぶん昔のことだが、米軍から航空自衛隊へ供与されたF-86F戦闘機が、たくさん木更津に保管されていたことがあった。これらは、飛行時間が少なく機体の寿命は十分あるが、国産化された機体に比べて、搭載している装備品が古いことなどが理由で、使われないまま眠っていたのである。

その後、航空自衛隊は、まだ耐用寿命が余っているこれら保管機の主翼を、寿命が近い機体の胴体と組み合わせて、搭載装備品も新しく、まだ長く使える機体として再生した。

さて、こうしてできた機体は、国産機の識別を受け継ぐのか、それとも供与機の識別を受け継ぐのか。
もともと製造銘板は胴体に貼られているので、国産機体の識別を受け継ぐように見える。
しかし、そうすると機体の寿命管理がおかしくなる。
国産機体の識別を受け継いでしまうと、機体の寿命を決める飛行時間などの履歴も受け継いでしまうので、せっかく主翼を交換した意味がなくなってしまうのだ。

結論としては、当然、まだ若い主翼を提供した供与機の識別を引き継ぎ、胴体に書かれていた識別番号も書き換えられ、おそらくは銘板も貼り替えられたのである。

また、最近の例では、東北大震災の津波で損傷したF-2B戦闘機が、機体の主要構造交換を含む再生工事を受けている。
これは、ほとんどの主要構造を新規製造しており、実質的には再生産したに等しいのだが、いろいろな都合があって、あくまで「再生」したことになっているものである。

これらのF-2Bは、外見こそ津波で被災した当時の識別を残しているが、管理上は新しい機体として扱われることになる。そのため、製造番号は被災機とは変えてあり、新規に管理しているのである。

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