富士重工がAH-64Dの発注中止をめぐり防衛省を提訴へ

先月のエントリに、陸上自衛隊向けのAH-64Dヘリコプタの発注打ち切りを巡り、富士重工が防衛省を訴える勢いだと書きましたが、とうとう提訴の方針を固めたというニュースがありました。
事の経緯は、大雑把に言うと、次のような感じ。

  1. 防衛省は、約60機の調達を見込む戦闘ヘリコプタとして、富士重工の推すAH-64Dを採用。
  2. 富士重工は、米ボーイング社からライセンスを取得し、生産開始。500億円弱の初度費用が発生。
  3. 防衛省は年度ごとの予算で少数づつを発注。(普通の調達方法です)
  4. 富士重工は、負担した初度費用を各年度の契約に割掛け。(これも他の防衛装備品と同じです)
  5. 米ボーイングが当該タイプのAH-64Dの生産を終了。富士重工はボーイング製部品の調達などが不可能に。
  6. 上の事情で、富士重工でAH-64Dの生産を続けるには、単価の引き上げが不可避に。
  7. 防衛省は、ただでさえ高価すぎる買い物だったAH-64Dの調達を、13機で中断することを決定。
  8. 完全に梯子を外された形の富士重工は、防衛省を提訴。 ← 今ここ

(2015年12月17日追記:12月16日に富士重工への全額支払い判決が確定しました)

今回の騒動で、安直な防衛装備品調達には重大な危険があることが、図らずも表面化しました。
まず、上記時系列リスト 1. に先立つ時点で、AH-64Dの対抗案として、ベル社が開発中だったAH-1Zのほか、国産ヘリOH-1の技術を基にした国内独自開発案もありました。
しかし、陸自はAH-64Dに強くこだわりました。(私は今でも理解に苦しみます)
やはり「世界最強の戦闘ヘリ」という謳い文句は魅力的でしょうし、急速に装備を充実させる周辺諸国に対して、焦りがあったのかもしれません。
軍人さんは、たいてい「最強」と言われる兵器を欲しがり、周辺国の装備には強い関心を持っています。他国の軍隊を打ち負かすのが仕事なので、仕方のないことでしょう。
でも、ある国で使われて「最強」と言われている兵器が、別の国でも「最良」の選択だとは限りません。
むしろ、日本のように一定の兵器開発能力を持つ国にとって、他国製の兵器を導入することは、みすみす開発機会を逃すだけでなく、兵器の調達計画を他国の事情に振り回され、おまけに自国防衛産業の存続まで危うくするという、超おバカな選択になってしまうこともあるわけです。(今回のAH-64Dのように)
なんでも国産しろとは言いません。輸入すればいいものを、企業や政治家のエゴで国内開発にして、陳腐な飛行機に無駄遣いした例もありましたから、そんなのはやめるべきです。
でも、他国の持ち物や上っ面の評判に振り回される兵器調達では、いずれ国防そのものが立ち行かなくなります。
事実、航空自衛隊がF-22導入にこだわり、F-2に続く戦闘機の国内開発を放棄した結果、日本の航空機産業は、あまりにも多くを失いました。
私見ですが、ここ10年~15年ほどの施策の過ちは、日本の航空産業にとって、昔よく言われた「戦後7年間の空白」などよりも、重大な後退をもたらしてしまったんじゃないかと思います。
あ、なんかズレたこと書いちゃいましたね。読んじゃった人、ごめんね。(笑)

【2014年3月1日追記】
2010年1月15日、富士重工は初度費の未償還額など351億2400万円の支払いを求めて国を提訴しましたが、2014年2月28日、東京地方裁判所が請求棄却の判決を出しました。

【2015年12月17日追記】
2015年12月16日、最高裁第2小法廷は16日付で国側の上告を退け、全額の支払いを命じた二審東京高裁判決が確定しました。
防衛省が富士重側に初期費用を支払うとの合意があったかが争点で、一審東京地裁は請求を棄却しましたが、二審は「法的な拘束力がある合意は成立していない」とする一方で、「防衛省と装備品の受注業者との間では、調達終了までに初期費用を支払うことが当然の前提とされていた」と指摘し、国の責任を認めていました。

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