FS-X設計チームにおけるF-2開発の話である。
タイトルに「主任設計者が明かす」と書かれてはいるが、秘密の暴露みたいな内容は一切ない。
しかし、航空機の「設計チーム」という組織がどのように運営され、どのようにして開発作業を進めるのか、といった事柄について、きちんと書かれた本はこれまで皆無に近く、その意味でも極めて大きな価値を持つ一冊である。
FS-X(現在のF-2戦闘機)は、米国のF-16を基にした日米共同開発という形で開発され、内外でもセンセーショナルな話題になった戦闘機である。しかし、それゆえに、この開発プロジェクトは様々な憶測や思い込みによって語られることが多く、多くの誤解を生んできたものと思う。
本書の刊行によって、少しでも多くの人たちに、FS-Xとはなんであったのか、正しい理解が広がることを願ってやまない。
なお、本書はあくまで「設計チーム・リーダーであった著者が開発を振り返って書き遺した」本であり、飛行機マニアが適当に書いているような、よくある飛行機の解説本ではない。その意味では、飛行機マニアを自認する人たちのすべてに勧めるつもりはない。
しかし、FS-X開発に携わった者たちが抱いていた思いが、平易な技術解説を伴いながら、余すところなく描かれている。広く読まれることを願ってやまない。