防衛省による発表
防衛省による第一報は2018年12月21日付で、内容は次のとおりです。
12月20日(木)午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から、海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が、火器管制レーダーを照射された。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21g.html
これを受けて、韓国政府は「火器管制レーダー照射をしたことはない」という見解を表明し、日韓政府がまったく異なる事実認識を持っていることが、日本のメディアで報じられました。
韓国政府が「照射していない」と述べたことに対して、防衛省はすぐさま翌22日付で以下のようなコメントを発し、あくまで「火器管制レーダーの照射があった」と判断していることを強調、強い抗議の意思を示しています。
(略)
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/22a.html
海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断しています。その上で、火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位・距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではなく、遭難船舶を捜索するためには、水上捜索レーダーを使用することが適当です。
加えて、火器管制レーダーの照射は、不測の事態を招きかねない危険な行為であり、仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において、非常に危険な行為です。なお、韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)において、火器管制レーダーの照射は、船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられています。
以上の理由から、今回このような事案が発生したことは極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります。
照射されたレーダーの種類を識別する仕組み
P-1哨戒機には「逆探システム」(ESM =Electronic Support Measure)という装置一式が備えられています。P-1だけでなくP-3Cなども同種システムを備えていますし、戦闘機などの場合はもっとコンパクトですがRWR(Radar Warning Receiver)とか呼ばれるシステムを積んでいます。
逆探システムは、機体のあちこちに取り付けられたアンテナによって、他の艦艇、航空機、地上システムなどから発射される電波を、常時受信しています。受信した電波の信号は、増幅器などを介して処理装置(コンピュータ)に送られ、電波の各種パラメータが抽出されます。
電波のパラメータというのは、電波の到来方向、周波数、パルス繰り返し周波数(PRF)、変調方式などの性質なのですが、どういうパラメータをどう処理しているかは秘密です。
これらのパラメータは、レーダーの種類・型式などによって異なりますから、あらかじめわかっているデータと照合することで、そのレーダーがどういう型式で、どういう目的のものであるかが識別できます。
この、あらかじめわかっているデータをまとめたデータベースが「識別テーブル」とか「脅威テーブル」と呼ばれるものです。
しかし、どこの国の軍隊も、自分とこで使っている軍用レーダーのパラメータを他国に教えることはありませんので、そういうデータは苦労して集めなければいけません。
そして困ったことに、苦労して集めたデータも、それがいつも必ず正しいとは限りません。改修やソフトウェアのアップデートなどで、細かいパラメータは変わってしまう可能性が往々にしてあるからです。
ちなみに、このデータベースには、「脅威」側の情報だけでなく味方の情報も入っているはずです。そうでないと「前にいる敵機は中国のSu-27だけど、後ろにいる味方機はF-15だかF-2だかわからない」というヘンテコな事態になるからです。だから、韓国艦の情報が入っていたからと言って、自衛隊が韓国を脅威視しているわけではありません。