ECサイトの「やらせレビュー」

NHKで「”やらせレビュー”のリアル」という取材報道がありましたので、僕も録画して見てみました。
業者がお金を使って「やらせレビュー」を買っているというのは、ネット通販のヘビーユーザーなら知っている話です。番組でも紹介されていた、やらせを見極めるための「サクラチェッカー」というサイトも、多くの人が知っているのではないかと思います。

番組では、こうした悪質業者に対抗するには、消費者側でできることは少ない、としていました。
しかし、消費者としては「ECサイトのからくり」を知って行動することが、悪質な業者の跋扈を防ぐルールづくりに向けても必要だと思い、ちょっとこのエントリを書いてみました。

Amazonレビュアー募集グループ

実は僕も「やらせレビュー」の実態に少し興味があって、調べてみたことがあります。
多くの「レビュワー募集」がFacebookのグループ機能を使って行われているというので、僕自身もいくつかのFacebookグループに登録してみて、様子を見てみたのです。

そうすると、やらせレビューの募集は、NHKの報道どおり中国人と思しき人物が手掛けているケースが多く、返金はPayPalで行っているケースがほとんどのようです。
また、今確認してみると、過去に僕が「参加登録」したはずのグループがごっそり消えているので、Facebookも目を光らせるようになったのではないか、と思われます。

Facebookのグループで募集されていた「さくらレビュー」の対象商品は、ほんとうに多種多様でした。腹筋を鍛える「シックスパック」みたいなのも多かったですし、いわゆる「大人のおもちゃ」と呼ばれるアダルトグッズも異常に多かったです。(そんなに需要があるのか僕には不思議だった)
あと、家電などに特化した募集グループもあって、なかなか盛況なようでした。

僕も一度だけ、試しに応募して見たことがあります。
すると、Amazonのアカウントを見せろ、とか、PayPalアカウントを見せろ、などと言ってきて、2回ほどやりとりしただけで返事が来なくなりました。
こちらが本気で「やらせレビュー」を書くつもりがないのが、バレたのかもしれません。業者側も、それなりに警戒しているようです。

やらせレビュアーを騙す奴もいる

面白いと思ったのは、しばしば「MacBook Pro」などの高額人気商品について「やらせレビュー」の依頼が掲示されることでした。5つ星のレビューを書けば半額とか全額を返金するというのです。

そんな人気商品なら、放っておいても売れそうなもので、最初はその目的がわからなかったのですが、その多くは「詐欺」だった様子です。
詳しくはわかりませんが、 購入して5つ星のレビューを書くんだけど、お金は払われない、とか、お金だけ騙し取られる仕掛けがあるとか、そういう類なんでしょうかね。

騙されたほうも、Amazonなどには苦情や文句の申し立てようがありませんから、結局は泣き寝入りなのですが、Facebookのグループに詐欺犯の情報を書き込んでいる人を、よく見かけました。
こんな手口に引っかかる側もおめでたいとは思いますが、こんなところにも罠を仕掛ける奴がいるわけです。

一般購入者への「やらせレビュー」依頼

Amazonでは、レビューを金で買う行為を禁止しており、悪質な出品者はアカウントを取り消すなどの処置もしているようですが、NHKの番組でも言っていたとおり、とても追いついていません。
むしろ、どこから「悪質」だと判断するのか、あるいは見抜けるのか、AI任せで判定ができないゾーンは広いと思います。

たとえば、これは僕が以前Amazonで買った「撮影ボックス」に入っていた説明書なのですが、明らかにルール違反だと思うのです。

レビューでAmazonギフト券

5つ星レビューを書いたら1000円バックします、っていう話ですねこれ。

当時、こういう「撮影ボックス」がかなりの値段で売られていて、しかも競争が激しかったのです。今では価格も落ち着いてきたようなので、こういう手口では売れにくくなってるんじゃないかと思いますが。

良い出品者が駆逐される

一方、僕も勉強を兼ねて少しだけAmazon出品をしているので、そこでわかってきたことも、ちょっと書いておきたいと思います。

まず、Amazonで普通にものを売ろうとしたら、Amazon内の検索で上位に表示されなければ、いくらよい商品でも売れません。
どんなジャンルであれ、Amazonでは商品の数が多すぎるので、検索結果の順位が上位になければ、その商品は「存在しない」のと同じです。そして、購入者の評価が高い製品は、上位に表示されやすいアルゴリズムになっているようです。
なので、出品業者が「やらせレビュー」で高評価を得ようとするのは、消費者の判断を欺くためであると同時に、検索結果で上位を得るためでもあるわけです。

自社商品の露出を高める方法はほかにもあって、それがAmazonに「広告料」を払って、検索結果への表示を「買う」ことです。
この「広告料」の仕組みにはいろいろあるんですが、基本はオークション形式になっていて、商品が売れようが売れまいが、表示あるいはクリックされたらお金が取られます。
出品者は、その費用を当然価格に転嫁せざるを得ませんから、消費者の目につきやすい商品というのは、ブランド力はともかく、コスパの面では「お買い得」ではないことが多いように思います。

結局、Amazonとか楽天とかYahoo!ショッピングとかの市場は、巨大EC企業が儲けるための仕組みなのですから、馬鹿正直な出品者にとっては生き残りが非常に難しいマーケットになっている、というのが、僕の正直な感想です。

できるだけレビューしたほうがいいよね

とはいえ、EC市場は現代の消費者にとって欠くことはできませんし、とりわけ生活圏の実店舗が乏しい地方在住者にとっては、文化的な生活を営む上で重要な存在になっています。

このEC市場を健全なものに保つためには、もっと政治の場でも検討されなければいけないし、巨大市場を管理するEC業者には重大な責任があると思います。
そして、それらと同時に、消費者自身も意識的に行動する必要があるでしょう。

消費者の行動によって、市場の構造をドラスティックに変えることは困難です。
しかし、より積極的に、良心的なレビューを書くことが、消費者全体の自己防衛手段として、個々の消費者自身に求められているのではないか、と思うのです。

こうして考えると、巨大ECサイトの手の内で踊らされている気がして、腹立たしくも思うのですが、主体的に行動しない消費者は、投票しない有権者と同じように、結局「いいカモ」にされてしまうのではないか。そんな気がしています。


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