STOL型ATR42の開発

ATR42というのは、最近日本のコミューター路線でも導入が目立ってきたフランス製の旅客機だけど、ATR社では、そのSTOL型の開発に乗り出しているんだとか。

ATR42-600Sは、エンジンの改良で離陸推力が増加し、フラップ25度での離陸により離陸揚力も増えた。
ラダー改修による横方向制御の向上、スポイラーを使用した揚力制御、自動ブレーキを組み合わせることで、STOL性を実現した。
800メートル級の滑走路を離着陸する場合、既存のATR42-600では乗客数を約半分の22人に抑えなければならないが、STOL型のATR42-600Sであれば、定員48人を乗せて運航できるという。

Aviation Wireの記事から引用

飛行機の離陸性能を考えるうえで、適切なフラップの使用は重要である。
普通だと離陸フラップなんてせいぜい15°くらいのもので、これ以上の角度にすると、失速速度は下がるものの抵抗が増えてしまい、結果として離陸滑走距離はたいして縮まらず、離陸後の上昇力が下がってしまう。
要は、大きなフラップ角を使うには抵抗に打ち勝つ推力が必要なのだ。そこでATR42 STOL型では、推力の向上で抵抗に打ち勝ち、なおかつ上昇角の要求も満足させることが見込まれているようだ。

あと、ラダー(方向舵)の改修による偏揺れ(かたゆれ、ヨー)制御の増強も、STOLには欠かせない。
離陸中のOEI(片エンジン故障)に備えるためである。
(なお、記事中で「横方向」制御とあるのは、正しい言葉づかいではない。)
耐空性基準では、離陸中にクリティカル・エンジンが停止しても、機体は離陸コースを大きく外れず、傾かずに上昇することが要求されている。
この「片発離陸」要件を満たすためにはラダーの効きが重要なのだが、STOLのために離陸速度を遅くすると、速度の2乗に反比例して空気の力(動圧)が小さくなるので、ラダーの効きは著しく悪化する。
これに対応するため、ラダーを低速でも効くよう改良したり、自動化したスポイラー制御を加えたりするということだ。

双発機でSTOLを狙うのは、なかなか厳しいのである。

日本エアコミューターのATR42

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