1985年8月12日に発生した日本航空123便の墜落事故は、単独の航空機事故としては史上最多の犠牲者を生んだ悲劇であった。
その事故原因に関しては事故直後から様々な憶測が語られ、調査報告書が発表されてからも、その調査結果を否認する陰謀論が相変わらず語られ続けている。
陰謀論の中でもとりわけ根強いのは、日航123便は自衛隊の戦闘機によって撃墜されたものであり、それを政府が隠蔽しているのだという説のようだ。
この説を唱えた本を出したのが東大卒の元日航CAであり、これを著名な評論家である森永卓郎氏が様々なメディアで拡散していることもあって、多くの人がこれを信じている節がある。
森永卓郎の戦争と平和講座 第76回:日航123便はなぜ墜落したのか(森永卓郎)
運輸安全委員会の調査報告書
国交省の運輸安全委員会では、陰謀論が尽きない本事故について、通常の事故調査報告書(それも非常にページ数が多い)のほかに、一般向けの丁寧な解説をわざわざ用意し、ウェブサイトの特設ページに掲載している。
日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説
この解説書では、多くの陰謀論に共通する「急減圧が起きていないのではないか」という疑問を丁寧に解いているので、陰謀論を安易に受け入れる前に、ぜひ目を通していただきたいと思う。
しかし、運輸安全委員会が多く触れていない「自衛隊のミサイル」説についての補足と、僕が最初に感じた直観的な疑問の解消について、本エントリで触れてみたい。
理解の助けになれば幸いである。
自衛隊のミサイルだったのか
先に挙げた森永氏の記事では、「123便から窓の外を撮った写真を解析すると、オレンジ色の物体が飛行機に向かって飛んできている」として、「自衛隊の訓練用ミサイルなどの飛行体は、オレンジ色で塗られていた。」と書いているが、これは根拠のない憶測である。
戦闘機が訓練用に使うミサイルには以下のようなものがあるが、当時も今も、これらはオレンジ色には塗られていない。
1. ダミー弾:重量や形状を模擬しているが、目標探知能力はなく、発射することもできない。
2. キャプティブ弾:目標探知能力はあるが、推進装置はなく、発射することはできない。
3. イナート弾:目標を探知し、発射することもできるが、爆発する弾頭がない。
これらのほかにもちろん「実弾」があるが、1985年当時、実弾を訓練時に搭載することは考えにくいうえ、仮にそうであったとしても、やはり実弾は「オレンジ色」などには塗られていない。
また、747を撃墜する威力があったとすれば「実弾」が疑われるわけだが、事故機の残骸には、ミサイルが攻撃目標に被害を与えるために飛散させる「フラグメント」が当たった形跡はない。
ちなみに、ロシア軍のミサイルに撃墜されたと言われるマレーシア航空17便の残骸には、写真のようにフラグメントが当たった痕跡が明瞭である。
海上自衛隊の標的機が当たったのか
このエントリを公開後、海自の標的機が当たったという説についてコメントが寄せられたので、これについても付記しておく。
海自の標的機というのは、艦艇による射撃訓練に使われるBQM-34ファイアビー、またはBQM-74チャカのことである。
これらの標的機は、訓練支援艦と呼ばれる艦艇から発射され、確かにオレンジ色に塗られている。
しかし、事故当時、海自の保有している唯一の訓練支援艦であった「あづま」は呉に入港しており、事故地点の付近にこれらの標的機が飛んでいたとは考えにくい。
更に加えると、これらの標的機が747型機の尾翼に衝突したとしても、尾翼の付け根から脱落させるような損傷を与えられる可能性は低いように思えるし、仮にそうであったとしても、747を操縦不能に陥らせた原因である全油圧系統喪失には至らないのである。
従って、海自標的機の衝突説も、その可能性を疑うに足る材料はない。
与圧隔壁の破壊で尾翼が吹き飛ぶか
僕がこの事故で最初に疑問を感じたのは、後部与圧隔壁の破壊によって生じた空気流入で、垂直尾翼があれほど大きく損傷するだろうか、ということであった。
この点についても、事故調査委員会は詳しく調査を行っており、実証試験を行っている。
そして、試験結果も報告書の付録として公開されている。
その結果、「…後部圧力隔壁の破壊によって流出した客室与圧空気の一部が垂直尾翼内に流れ込み、その内圧が、約 4psi 上昇すると垂直尾翼は破壊し得ると考えられる」という結論を導いている。
試験結果から見れば妥当な結論であろう。
また、最近日本で開発された自衛隊向けの輸送機において、与圧に対する設計強度が十分でなく、与圧試験中に試験機が大きく破損したことがあった。
これについては防衛省機であるため詳細が公開されていないが、与圧による構造破壊の大きさを、改めて日本の航空機技術者に知らしめた事例であり、僕も日航機の尾翼破壊について、実感として納得を得る思いがした。
与圧隔壁が破壊すれば、垂直尾翼の喪失につながる構造破壊は、起き得るのである。
政府が事実を隠蔽しているとすれば
「自衛隊機に撃墜された」論を唱える人は、そもそも運輸安全委員会の報告書を信じていない。
これは国民を騙すために作られたフェイクであり、政府に都合の良いように「作られた」調査報告だと言うであろう。
しかし、自衛隊機が日航の旅客機を撃墜する理由は何なのか。
なぜ500人以上が乗った旅客機を撃墜するなどという、常識で考えられないようなことを起こす必要があったのか。
「誤射」だとするなら、自衛隊の訓練空域ですらない場所で、どうして誤射などが起こりえるのか。
そして、政府がなんらかの事実を隠蔽しているとすれば、なぜこれほど緻密で広範な事故調査が行われたのか、また、なぜ調査内容に矛盾が生じていないのか。
これらのことから、自衛隊機による撃墜説は、あまりにも合理性を欠いた主張であると言わざるを得ないのである。
自衛隊を事故の原因とする説では、海自の護衛艦から発射された無人標的機のファイア・ビー、及びそれを追尾していた誘導ミサイルのチャカ2が、123便に衝突した、という主張が出されています。
ファイア・ビーとチャカ2がオレンジ色に塗装されている写真が掲載されています。
http://www.link-21.com/JAL123/022.html
相模湾上空7000m で、123便とファイア・ビーの航路が交差した、という主張です。
無人標的機による衝突であれば、撃墜ではなく、意図しない事故ということになります。
これらの点については、いかがでしょうか。
私は、「日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る」は未読なのですが、
レビューの内容をみると、ミサイルがファントムから発射されたという主張ではなく、
衝突後にファントムが追尾していた、という主張ではないでしょうか。
私自身は、この本の主張が明確に否定される根拠が専門家から出されているのかどうかを、
知りたいと思っています。
コメントありがとうございます。
時間のあるときに追記を加えたいと思います。
先のコメントの続きなのですが、標的機「ファイアー・ビー」との衝突説については、それに触れている角田四郎氏の著作があり、「同書で自衛隊の正式コメントとして述べられているように、相模湾は標的機による訓練海域ではありません。」ということのようです。
https://blog.goo.ne.jp/adoi/e/4dc299cefbb32c9a90dee66910f721e7
また、同書によると「標的機を搭載する訓練支援艦「あづま」は、当日は呉(広島)のドックに入っており、公式記録上、標的機が飛ばせる状況ではなかった」とのことでした。
角田氏も独自の衝突説を唱えているのですが、自衛隊としては、陰謀論の著作であれ、取材を受ければ陰謀論を否定できる根拠を説明している、ということなのでしょう。
https://www.amazon.co.jp/dp/4887371535
その種の本の嚆矢は1998年ですね。私も店頭にあるのを見てギョッとしたのを覚えてます。
今回の本もCAだった以上の話題性は無いでしょう。
大企業にいた経歴を権威付けにして専門家面する人士には困ったものです。
トンデモ本と察するのはさほど難しくない案件だからまだしも、
一見冷静で科学的な風を装って利害関係に手を突っ込んでる阿呆はどうしようもない。
森永卓郎経由での青山透子の陰謀論
東京近郊ならradikoのタイムフリーで該当部分を聞くことができます(8月20日まで)
14:09からですので、セットしておきました
大竹まこと ゴールデンラジオ! | 文化放送 | 2018/08/13/月 13:00-15:30
http://radiko.jp/#!/ts/QRR/20180813150859
現場で命を落とした乗客たちが、真実を語ってる。
いまだに圧力隔壁が原因の事故、と思っている人たちに問います。
時速300キロで山肌に突っ込んだのに、どうして乗客たちの遺体が木々に引っかかっているんですか?
そして、乗客たちの遺体が引っ掛かっている木々が根元から空に向かって、折れてない、曲がってない、「垂直に、まっすぐ伸びたまま」なんですか?
座席のシートベルトをしていた乗客たちが、「2次元のテレビゲームのスーパーマリオ」のように、山肌に時速300キロで突っ込んでから、ジュラルミン製の機体を突き破ったうえ、「時速300㎞の慣性の法則を無視して」空に向かって「ぴょーん」、と飛び出したというのですか?
テレビ番組で見たけど、123便がキリモミ状態で落下したって?
ジョーダンだろっ?
コックピット内は、衝突回避アラームが鳴りっぱなしだった。山肌すれすれに飛んでいたんだから、キリモミ状態で落下するための充分な高度も時間もなかった。
高強度ジュラルミン製のジャンボが、キリモミ状態になっただけで飛行中に割れるわけないじゃん。
ミサイルを至近距離から機体中央部分に撃ち込み、その衝撃で機体後部が割れた。
時速300㎞で飛行しながら割れた機体後部は、高速度慣性と合わせて水平尾翼が「推進力を持たないグライダー」のように機能して、速度を落としながら山肌に軟着陸した。
だから、4名の生存者たちはすべて、機体後部の乗客たちだった。
座席シートベルトをしていた墜落後の乗客たちの落下地点が、フツーの墜落事故としては異常に広範囲に分散しているのも、シートベルトをしていた乗客たちの遺体が樹木に引っ掛かって、その樹木が根元から空に向かって垂直に真っすぐに伸びているのも、「上空でミサイルを撃ち込み、その衝撃で機体が割れて」、落ちてきたから。
事故直後の木々に引っかかった乗客たちの遺体は、今でも写真集やインターネットで見られる。
(政権側の関係者たちがComplaintsを申し立てて削除させていなければ)
大切なことは「ジブンの目で見て、ジブンのアタマで考える」こと。
交信記録も、削除や改ざんがあるようだし。
写真集は、みなさん自身のカネでwww (Copyright-Free)
コメントありがとうございます。
こういうふうに「ジブンのアタマで考え」てしまうトンデモさんがたくさんいらっしゃるようです。
ジョーダンだろっ?
ていうか、こういうコメントを貰うと、ちょっと恐怖を感じますね。
123便の事故で一番恐ろしいのは陰謀と言う宗教を信仰する連中ですよ彼らに何を言っても無駄です熱心な信者に神はいないと言っても信じないのが当然なのですから
自衛隊のミサイル訓練に日航機が巻き込まれたという説がありますが、ミサイル訓練というのはそもそも「ロックオン」までだというのを聞いた事があります。
だからこそ数年前、航空自衛隊の哨戒機にロックオンした某国の行為は大問題だったわけで。
「空白の15時間」なんていうのも単に墜落地点の特定に時間がかかっただけだと思います。
GPSもスマホもドローンも無かった時代です。
どうも「現代の常識(技術)」で考えてしまうから陰謀論が出てくるのかなあと思いますね。
いくらなんでも墜落から現場発見までに10時間以上(15時間?)かかるというのはあり得ないと思うのですが。
そこが不思議でどうしてもいろいろ疑ってしまいます。
自己調査報告書の解説によると、墜落現場そのものは1時間足らずで発見しています
炎上していたのだから発見は簡単ですね
ただ、GPSの無い時代では墜落現場が地図上のどこかということがわかりません
墜落場所が山岳地帯の奥地な上に夜間で地形がわからないためです
明るくなると同時に墜落位置を確定し地上から救助隊が進発しています
事故後、日本航空が開設した「安全啓発センター」内に展示されているオレンジ色の「物体」の正体、あればなんでしょうか。
「安全啓発センター」を訪れたことがないので、その「物体」がわかりませんが、オレンジ色の「フライト・データ・レコーダー」が展示されているようです。
一般には「ブラック・ボックス」と呼ばれることもありますが、実物は見つけやすいようにオレンジ色をしています。
自殺した航空自衛隊員が持っていた2枚の写真に失われたはずの垂直尾翼が写ってます。これがすべてだと思います。これに対する政府や自衛隊からの公式コメントが、35年間一度もないのがそれを物語ってます。情報統制する側の立場としては、核心を突く情報に対しては、ひたすら無視し、嵐が去るのを待つというのがあるらしいです。そうやって関係者がこの世から去るのを待つようです。
その写真が見たいです。