韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(5)

事態はどこで発生したのか

本件の第一報では、場所の情報がほとんどありませんでした。
Twitterでそんなことを書き、しばらく経つと能登半島の非常に近く、ほとんど日本の領海付近を示した地図をリプライしてくれた人があって、「そんなに近いところで?!」と驚いたのですが、結果的にはデマでした。
そして、改めてそのリプライを確認しようと思ったら、下のとおり。そのアカウントは凍結されていました。

日本側の発表では「日本EEZ内」としていますが、発表された映像では隊員が座標位置をコールする音声は消されていて、テロップに「日本EEZ内」と出るだけです。
わざわざ座標を秘匿して「場所は内緒だが日本のEEZ内だ」と言っているわけですから、普通に考えてもぜんぜん説得力がなく、むしろEEZ外だったのでは?という疑念が深まるだけです。
一部の人たちが、軍事機密なのだとかなんだとか言っていますが、その場所は相手がいちばんよく知っているわけですし、乗員が座標位置をどうコールするかなんて、秘密でも何でもありません。
自衛隊の航空では、緯度経度をアルファベットの組み合わせと数字で示すGEOREFコードで表すこともあり、レーダーサイトなどでもこのGEOREFを使ったりしてますが、そんなものは秘密でもなんでもありません。
防衛省はなぜ正確な場所を示せないのでしょうか?

そもそもEEZ云々は関係あるのか

では、防衛省の言うことを無条件に信じるとして、韓国艦が日本EEZ内で救難活動を行うことに問題があるでしょうか?

報道などでは、あたかも日本EEZ内で勝手なことをしていたかのように言われていますが、そんなことはありません。EEZはあくまでも公海であり、もしも日本が公海における救難活動を妨害したとしたら、そっちのほうが大問題です。
日本政府の発表と、それをそのまま垂れ流しているメディア報道は、明らかに日本国民に誤解を与えて「韓国が悪かった」心証を与えようとするものにほかなりません。

EEZは、誰もが知っているように「排他的経済水域」でしかなく、その水域内の天然資源の利活用権がどの国に属するか、という線引きでしかありません。この線引きについて国家間に疑義がある場合は、「中間線」などが設けられることもあります。

さて、今回の場所は、正確には明かされていないものの、日本海の「大和堆」であると報道されました。どんな場所かというと、これは日韓間でデリケートな扱いを要するところなのです。

日韓漁業協定水域図
https://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=44943

大和堆付近とすれば、おそらくは「暫定水域」近くで発生しているものと思われます。

この「暫定水域」は、竹島の領土問題が未解決であるために設けられた水域で、扱いは次のとおりになっています。
・両国が共に利用でき、自分の国のルールに従って漁業をすることができる
・相手国漁船に対し漁業に関する自国の関係法令を適用しない

このような水域付近で発生した救難活動中の事案に関し、 日本側が 正確な位置を秘匿したまま、日本のEEZだと言って一方的に相手を責めることは、どう考えても適切ではないのではないでしょうか。

【追記】やっぱり暫定水域らしい(1月19日)

以上のことを書いてからしばらく経ち、韓国のメディアが報じた地図を、 Twitterで教えていただきました。

なんと、完全に「暫定水域」です。(しかも韓国寄りの)
これに対して日本側はなにも反応していませんので、この地図に示された位置は間違っていないと思われます。

となると、日本側の「証拠映像」で、わざわざ座標を読み上げる音声を「ピー」音で消して「日本EEZ内」というキャプションを入れているのは、暫定水域であることを誤魔化すためだったということです。
暫定水域は、日本EEZであると同時に韓国EEZなのです。
にもかかわらず、わざわざ座標を秘して「日本EEZ内」とキャプションを入れたのは、韓国艦が「日本のEEZに入り込んでいた」という悪印象を与えるための「虚偽」だったということです。

こうなってくると、もはや日本側の「証拠映像」は、火器管制レーダーの照射があった証拠を示すためのものではなく、韓国を批難することに目的を置いた映像だったと言うほかないでしょう。

「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(6)」へ

関連してるかもしれない記事:


韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(5)」への6件のフィードバック

  1. 韓国側も位置情報は公式に開示していないはずですが。
    なぜ、日本側の情報を疑い、韓国側のネット情報を鵜呑みにして、日本側の虚偽と結論付けるのか理解できません。

  2. 日本領海付近を示した地図については出所不明であり、信じるべきでないことは同意します。しかし韓国のメディアが報じた地図はどこから出たのでしょうか。ちゃんと調べていますか?
    日本メディアがEEZ内だったことを非難しているかは(どのメディアを批判しているのか明確にしてないので)さておき、日本政府がEEZ内であったことを非難したことはありません。なぜならそこで行われていたのは救難活動だからです。
    ただの救難活動を瀬取りだと非難する日本人がいることには嘆息していますが、日本政府や防衛省は、救難活動も駆逐艦がいた位置も非難していません。
    日本政府と、あなたの言う「日本のメディア」をごっちゃにしてないですか?

    1. 日本政府は、自ら「証拠」として出した映像から「わざわざ座標の情報を消して」それを「日本EEZ内」だとして公表しました。
      なんの秘密も存在しない情報を伏せて、そこに「日本EEZ内」というテロップを入れるのは、明らかに「恣意的」な情報の隠蔽ないし歪曲です。
      僕が問題視しているのは、「証拠」だと称しているような映像に、そうした「非常に恣意的な情報操作」が加わっていることです。
      韓国メディアの報じた地図が信じられるかどうかですが、私は最初から「暫定水域」である可能性を疑っていましたし、日本側からもなんら否定する声が出ていません。
      もし、あの「暫定水域であることを示した地図」が誤りだというなら、どうして日本政府から明確な反論ないし位置情報が発表されないのでしょうか。

  3. 「わざわざ座標の情報を消して」と、あなたにとって位置情報はなんの秘密も存在しない情報かもしれませんが、自衛隊に限らずどこの国の軍隊でもこのような場合で安易に位置情報は開示しませんよ。開示しないのが普通なので、否定する声が出るはずもありません。韓国軍も同じでしょうと言っているのです。それを「恣意的」な情報の隠蔽に結び付ける思考が理解できません。なんでもかんでも「安倍が」と片付けてしまうレベルとかわりない。それからEEZについてもやたら「EEZは関係ない」という方を見かけますが、暫定水域であろうがなかろうが、その中での出来事なので、場所が「日本EEZ内」ということ自体、当たり前のことです。広い海原のどのあたりか目安を示すだけで、それ以上の意味も、以下の意味もないはずです。

  4. ・救助の妨害行為
    韓国の海難救助艇の乗組員はヘルメット上のカメラで常に映像記録を行なっている。セウォル号事件でもそうだったし、今回も北の漁船に接近している際の映像を公開している。
    自衛隊機が救助を妨害するほどの危険な飛行を行なったなら、その様子なり音声なりすぐに公開できるはずだが韓国はできていない。

    海軍艦は救助対象からかなり離れた場所におり、実質的に人命に関わる救助に参加していたわけはなく、すでに待機状態であったと推察できる。

    救難活動をしていると認識しているにせよしていないにせよ、担当海域上の艦船の行動を近くで観測するのはどこの国でもやっていることで、それがなぜ救助活動を妨害する危険行為なのか誰も説明できていない(飛行中の救難ヘリに急接近したとかならまだしも)。

    ・当該海域について
    韓国の艦船が暫定海域で救助活動をしたからと言って、特に問題ないのはわかる。
    しかし、だからと言って「国際法や慣例で認められる範囲であっても近接して観測してはならない」という法はあるのか?
    日本側が国際法や慣例を破った確たる証拠を韓国は出せていない。

    そもそも、徴用工問題で日本企業を守りたい日本にとって、レーダー照射を公開しない(韓国に舐められても騒がない代わりに判決どうにかしろ)という選択肢はあってもレーダー照射を捏造しておまけに公開する(韓国の態度を硬化させるだけ)選択肢はないと思われる。

    韓国政府の発表も当初二転三転していた。

    つまり、今回の事案を公開して韓国の態度硬化を増長させたのは失策だが、韓国艦が戦闘用レーダーを照射した事自体は事実だと考えられる。

    であるなら、どこの海域だろうと、友軍だろうと仮想敵国だろうと、平時に向けることを戒められている攻撃用レーダーを照射する事を是とする法はどこにあるのか?

    そこを無視してはならないのではないか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください