ボーイング社が開発している777X型機の地上試験で、与圧荷重によって貨物ドアが破損し、試験が中断されたようです。
この地上試験は、いわゆる静強度試験のうち、機内の圧力を外気よりも高める与圧を加えるものです。
この与圧荷重試験では、我が国のC-2輸送機にも同様の重大不具合が発生し、開発が大きく遅延しました。6年近く前のことです。
ボーイング777Xは、現行の777シリーズの後継機となるモデルですが、乗客の快適性を向上するため、機内の与圧を最新の787型機と同レベルに引き上げることになっています。
これまでの777型では、機内の与圧高度が 8,000ft(約2,400m)であったものを、787型と同じく 6,000ft(約1,800m)に保つことになるようです。
つまり、これまでの777型だと、乗客は2,400mの山頂にいるのと同じ気圧環境だったものを、1,800mの山頂レベルに保つわけですから、高度10,000以上を飛行する旅客機にとって、機内と機外の圧力差が大きくなるわけです。
787の場合、胴体は炭素繊維複合材製で、十分な強度が確保できました。
しかし、777Xは従来の777型同様のアルミ合金製であるため、これまでの設計を相当改めなければ大きくなった気圧差に耐えられません。加えて、777Xは窓の大きさも拡大されており、胴体の構造設計はかなり厳しくなったと言えます。
今回、貨物ドアの破損が生じた与圧は、ボーイング社の説明によると、通常の運用ではあり得ない高さだったそうなので、設計荷重を上回る試験ケースで発生したものなのでしょう。
とはいえ、航空機設計の安全基準では設計荷重の150%(Ultimate Load)まで耐荷することが求められますので、このままでは777X型機の実用化ができません。
これからボーイング社は、設計改善を加えて、改修した機体で試験を再開しなければなりませんが、これは簡単な仕事ではありません。試験機(供試機)が破損したとなると、破損による周辺への影響も含めた細部検討が必要で、スケジュールへのインパクトは大きいと思われます。
日本もC-2で苦しめられた与圧荷重問題ですが、737Xの問題を同時に抱えたボーイングが、これをどう乗り越えるか、関心を持って見守りたいです。