岐阜県の防災ヘリ「若鮎II」が、北アルプス奥穂高岳付近の通称「ジャンダルム」で救助活動中に墜落し、乗員3名が殉職した。
この話題には触れないでおこうと思っていたのだが、どうにも見過ごす気になれない事実が明らかになってきた。
9月26日付の朝日新聞によると、岐阜県の聞き取り調査の結果、県防災課や県防災航空センターの職員の中に、「ジャンダルム」と呼ばれる岩峰の存在を知っている者がいなかった、というのだ。
にわかに信じ難いニュースだった。
「ジャンダルム」といえば、北アルプスの登山ガイドには必ず載っている難所で、登山などしたことがない僕でも知っているくらいの名峰である。しかし、岐阜県防災課や、防災航空センターの職員は、そんな知識すら持っていなかったというのだ。
そして、そういう連中が、防災ヘリを北アルプスの山岳救助に向かわせたのである。
北アルプスを熟知する県警航空隊や高山署からは、県防災課や防災航空センターに対して、何度も出動の見合わせを勧告したり、引き返すようにとの要請があったという。
しかし、出発後の防災ヘリ機長に、その声が届くことはなかった。
なぜなら、県防災課は、これらの警告を受け取っていながら、職員の判断で防災航空センターや防災ヘリには伝えなかったのだという。
もし、上に書いた報道が事実なら、「ジャンダルム」の名さえ知らず、山岳航空救助について全く知識のない県防災課の職員が、山岳救助のプロが発する警告を、ヘリ機長に伝えなかった、という、信じられないことが起きていたのである。
救難活動の最終判断責任は機長にある。従って、出動を決心した責任は防災ヘリ機長にある。
しかし、その後も発せられた県警航空隊や高山署からの重要な勧告を、県の職員が防災ヘリ機上の機長に伝えなかったとすれば、明らかに職務の怠慢だ。
まさに一刻を争う重要な判断材料を、最終判断責任者たる機長に伝えずに握りつぶし、その結果として3名の尊い人命と高価な航空機を失った。これは重大な過失である。
もはや問題は航空事故の範疇ではない。岐阜県行政職員の怠慢と思い上がりによる人災である。
厳正な調査を実施し、刑事罰も念頭に置いた厳しい処分が必要である。
【写真】 墜落した若鮎II (2009年7月30日撮影)
この事故で同じヘリに搭乗していて助かったのは、警官2名だけでしたよね。警察は出動を拒んだとさるが、何故に2名の警官は助かり、乗員は事故で亡くなったのでしょうか?
拒んだのであれば警官を搭乗させるはずもなのですが。その後のニュースでも、命拾いした2名の警官については、事故を通報したとだけの報道はありますが、後は何もあいりませんね。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
コメントありがとうございます。
下記のURLに国交省交通安全委員会の調査経過報告書が出ていますので、ご参考ください。
事故時に現場に降下していて無事だったのは、消防吏員1名と山岳警備隊員(警察官)1名だったようです。
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/kankoku/keika8_110128-JA96GF.pdf
最終報告も出ました。
https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=1982