福島県警AW139墜落事故について

福島県警のヘリコプターAW139が移植用臓器を搬送中に墜落した。
幸いにも死亡者が出ておらず、農地らしいところに大破した機体が横たわる写真が報道された。
パイロットは「強風にあおられて不時着した」との証言をしているとの報道もあった。
この証言で、機体の故障ではなさそうだと思った。
確かに当日は風が強かったらしい。

しかし、現場の状況と機体の破損状況を見ると、どうも釈然としないものがあった。
機体が風であおられたことが理由で不時着に至る事態というのが、考え付かないのだ。

着陸寸前に風であおられて制御困難になってしまった、などというケースも考えてみたが、そもそも不時着(墜落)現場は着陸予定地の近傍ではなさそうだ。
どうしても「風にあおられて」という証言が不思議に思える。

ところが、遅ればせながら、朝日新聞のサイトに墜ちていく機体を捉えた動画があるのを知り、見てみたところ、ますますわけがわからなくなった。

動画を見ると、機体は明らかにテイルローターの制御を失っており、メインローターの制御(サイクリック・コントロール)だけによって、激しい墜落から逃れたように見える。
証言された「風にあおられて」というのはなにかの間違いで、墜落の避けられないテイルローター故障が起きており、パイロットの技量で最悪の惨事を免れたというのが本当ではないのか。

現場のスチル写真では細部が分からないが、テイル・ローター・シャフトのカバーが開いている。
これが墜落前に起きたのか、墜落時に起きたのか。
また、現場からかなり離れたところに落ちていたという部品はなんなのか。

ともあれ、この状況が機体故障によるものであったとしたら、最悪の事態を免れたのは実に幸運であったと思う。パイロットは賞賛されるべきかもしれない。
ただし、もしテイル・ローターの推力を失っていたのだとしたら、そのときは速度を上げて、滑走路のある飛行場に滑走着陸するべきであった、とも思う。

調査結果が待たれる。

追記)
福島民報の記事から
「部品が発見されたのは不時着した現場の北西方向の場所で、飛行に関する部品もあったという。」
やっぱり。

さらに追記)
共同通信より
「テールローター(後部回転翼)に動力を伝えるための「ドライブシャフト」と呼ばれる駆動軸が破断し、一部が欠損していることが4日、関係者への取材で分かった。」
あー、やっぱり・・・。


福島県警AW139墜落事故について」への2件のフィードバック

  1.  こんばんは。オスプレイの安全性が問題になった折、固定翼機の滑空に当たる「オートローテーション」という言葉が話題になったかと思います。尾部ローターが機能しない場合、メインローターへの動力を切れば、オートジャイロのように反作用による機体の回転を抑えることができると思います。尾部ローターが壊れて速度が緩むとクルクルする状態でもメインローターの動力を切らずに速度を付けて滑走着陸をする方が、オートローテーションで落下速度を緩めて落とすよりもマシなのでしょうか。
     また、尾部ローターを壊してクルクルして落ちるヘリの動画をいくつか見た気がするのですが、カモフのような同軸反転ローター式の方がいくらか安全なのでしょうか?値段や操縦性、あるいは惰性で旧西側では流行らないのですか?最近では韓国が借金のカタ?で取ったカモフKa-27対潜ヘリくらいしか見ない気がします。
    コントラプロペラにロマンを見出す飛行機ファンとしては残念なのです。

    1. 私も回転翼機についての知識は頼りないものなので、念のためAW139のフライトマニュアルで緊急手順を確認してみました。
      するとやはり、テイル・ローターのアンチトルクを喪失した場合は、前進速度で風見安定を確保し、滑走着陸することが第一の選択肢となっておりました。

      ただし、一般論としては、仰るとおりオートローテーションという方法もあります。オートロでの降下なら、アンチトルクはほぼ必要ありませんので、パワーを絞ってオートロに入れるという手も、場合によってはあると思います。(特に、低空でホバリング時や低速時の場合は。)
      しかし、オートローテーションでは大きな降下率で降りていきますから、着陸時に大きくフレアをかける必要があり、その際に機体が回ってしまいますので、状況が許せば滑走着陸が望ましいと思います。

      カモフのような二重反転ローターや、カマンのようなシザース・ローターは、テイル・ローターの心配がないですし、いろいろメリットがありますね。
      ただ、機構が複雑になってしまうとか、飛行性能(とか運動性能とか)の面で通常型の方が有利な点がありそうで、広く普及するには至っていませんねえ。
      日本では唯一、アカギヘリコプターさんがKa32とKaman K-MAXを使ってますが、これはもっぱら木材や建設資材などの吊り下げ輸送に使うためで、そういう用途には最適です。

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