戦闘機の「発展性」

2015年という古いものですが、またトンデモを見つけてしまって頭を抱えているブースカちゃんです。
こういうサイトはアクセス数が稼げればいいのでしょうが、中身はなんとかならないんですかね。

中略
乗りものニュース

引用:
F-2は、本当に「発展性に欠けている」と言えたのでしょうか。かつて筆者(関 賢太郎)はF-2の開発に携わり現在、防衛省の先進技術実証機「心神」開発の中心的役割を担う技術者にインタビューをしたことがあります。彼らはこう言いました。

「どうしてF-2が発展性に欠けると烙印を押されたのか分からない。現代戦闘機はソフトウェアの書き換えでいくらでも機能を実装できる

あのですね、いくらなんでも、ソフトウェアの書き換えでいくらでも機能を実装できる、なわけがありません。スマホやPCのゲームみたいな「架空現実」と違って、現実世界においてはソフトウェアは魔法ではないのです。

この「F-2の開発に携わり~「心神」開発の中心的役割を担う技術者」というのは技術幹部のMさんのことでしょうが、まさかこんなふうに書かれるとは思わなかったでしょう。取材を受けるときは、相手のオツムの水準に応じて説明しなければいけないという見本です。

戦闘機が搭載するプロセッサのソフトウェアというのは、そもそも搭載するハードウェアを制御するものですから、いくら書き換えようと、ハードウェアの持っている機能や性能以上のことはできません。
赤外線追尾機能を加えようと思えば、まず赤外線を探知追尾するハードウェアが必要なのであって、ソフトウェアを書き換えればできるという話ではありません。
運動能力を改善しようと思ってソフトウェアを書き換えたところで、機体の空力性能や構造強度以上の運動はできません。
つまり、戦闘機の「発展性」というのは、基本的には、ハードウェアの話なのです。

この「発展性」とは、具体的に例を挙げると以下のようなことです

  • 搭載機器の追加や換装に対応できる空間的余裕
  • 電子機器の追加や換装に対応できる供給電力の余裕
  • 電子機器等の追加や換装に対応できる冷却能力の余裕
  • ソフトウェアの改修等に対応できるデータ容量および処理能力の余裕

開発に当たっては、こうした将来の発展性余裕についても、ある程度の配慮が求められます。
しかし、無駄な空間や強度、動力供給などを与えることはできませんので、自ずと限界があります。

F-2については、開発の初期から「発展性余裕」については議論がありました。
技術研究本部と機体メーカーで計画していた国内独自開発案は、完全に新規開発なので、十分妥当な発展性余裕が期待できました。

しかし、日本政府(自民党・中曽根政権)による政治決着によって、小型の機体であるF-16の改造開発となったため、物理的には発展性の余裕が限られることがわかっていました。なにしろF-16そのものが発展を繰り返してきた機体で、それをさらに発展させたのがF-2ですから、そう簡単に「発展性」なんて言ってくれるな、という状態です。

しかし、「どうしてF-2が発展性に欠けると烙印を押されたのか分からない。」というのは、技術研究本部の本音です。
なにしろ、もともと発展性に優れた国内開発案を、発展性の限られるF-16改造開発に変更したのは、ほかでもない政治の判断です。それを、後になって政治の側が「発展性が乏しい」と言って量産を打ち切るのは、開発を担当した技術研究本部としては「なに言ってんだ」という話です。

つまり、量産打ち切りに当たって「発展性」と言い出したのは、取って付けた理由でしかありません。
この当時、北朝鮮の弾道弾開発が大きな懸念事項に挙がってきており、アメリカと共同でBMD(弾道ミサイル防衛)を推進することが決まっていたため、より優先度が低い(と当時考えられた)F-2の調達をカットして予算を捻出したかったのが本音でしょう。

しかし、このBMDというのは、北朝鮮のミサイルから日本を守るのではなく、アメリカを守るために日本に配備するものです。そのミサイル・システムもアメリカから買うわけですから、日本の防衛費と土地を使ってアメリカを防衛するという事業です。

安全保障というのは政治の問題ですが、この頃から露骨に変な話が多くなってきました。


戦闘機の「発展性」」への6件のフィードバック

  1.  ご無沙汰しております。Lでございます。
     「栴檀は双葉より芳し」と言いますが、愚太郎センセは昔から愚太郎センセなんですねえ。
     70年代後半、F-16のフライ・バイ・ワイアがどうのCCVがどうのと界隈が盛り上がっていた頃、「”フライバイワイアを使えばベッドだって飛ばして見せる”という外国人のはしゃいだ話があるが、操縦翼面がなければそもそも無理。一応、操縦翼面があったとて空力的に舵が効かなきゃ無理」旨が航空誌の記事に書かれていたことを思い出しました(もちろん、国産を含めてVTOL研究のための「空飛ぶベッド」やら翼のない月着陸船の操縦訓練機はありFBWなわけですが、件の外国人はそれを指しているわけではない)。
     愚太郎センセにあっては、とりあえず過去50年分の各航空誌を読み込み、ノートを取るところから始めるべきでしょ。いわゆる「3年ROMれ」ですな。ま、原理的なこと、実作的なことよりも、カタログ的なことに興味が向いてしまうのでしょうが。

    1. そうなのです。コンピュータで制御すれば、これまで不可能だったこともできる、という比喩が、ソフトウェアを書き換えればなんでもできると、魔法のように思ってしまう人が多くて閉口します。
      基礎的な技術的理解が欠けたまま、軍やメーカーの宣伝文句だけを丸暗記して、スーパーメカの空想に浸っている「ミリオタ」が大量生産されているのです。
      近年の雑誌メディアやライターの劣化も、もう取り返しのつかないところまで来ているんではないかと思います。
      基礎的な技術を学ぼうと思っても、なかなか日本には良い本がないように思われますし、兵器趣味というのは、アニメロボットを愛玩するのと変わらなくなってしまいました。そんなの楽しいのかなあ、という気がしますが、こればっかりは仕方がないですね。

  2. いやぁ いくらなんでも
    それくらいは理解してるでしょう。
     ”いくらでも発展できる” と言ってるから
    言葉通りの意味で
    何でもできると思ってる、なんて常識に考えて
    あるわけない。
     
    あなたがたは
    世間一般の知的水準の低下を
    嘆いておられすようですが
    文章で書かれたことを
    書かれてることだけでしか
    判断できない 貴君らの読解能力は
    あまり知的水準が高い人のそれには思えませんな

     

    1. 戦闘機の「発展性」があるかどうかという話で「ソフトウェアがー」とか言い出すやつはダメだって話です。

  3. 強いて好意的に書けば、計算機周りのハードも含めてソフトウェア呼ばわりしてるのかも。
    でもお前一応ITエンジニアだったよなぁ?と思う次第。
    インフラ屋さんてか無線周りもやるNEっぽいので、より厳密にやらんと駄目じゃないかと。

    まあ、エアデータコンピュータから兵装管理システム、レーダー用のコンピュータ、
    場合によってはラック配置に配線まで引き直せばそりゃあ嫌でも性能上がるでしょうが…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください